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「日本のリベラル」は科学で再興されるべき

右も左も内輪で固まるのはやめよう

2017/11/16
note

自民党か反自民かという軸

 いまの与党の政治に不満があるのは概ね50代以上の男女です。とりわけ安倍晋三総理以下閣僚の顔ぶれにはイケメンが少なく女性に愛されず、どの調査でも概ね女性から圧倒的な「人柄が信頼できない」という不支持が集まるあたりは、本来は野党にとって好機である一方、支持層の高齢化による先細りが顕在化する前に手を打たなければならない状況です。

 こういう人たちに、左派がリベラルとは寛容と自由だ、だが自民党はその対極にいるから権威主義で不自由だと言っても、かつてヘルメット被ってゲバ棒持っていた高齢者ぐらいにしかなかなか届かないのではないかと思います。なぜならば、常識的な有権者の政治判断はリベラルか保守かですらなく、自民党かそうでないかで決まっているからです。日本政治の投票行動を分析する上で、最大にして最強の軸線は自民党か反自民かであることは野党でも選挙に携わる人であれば常識であって、だからこそ各政党の主義主張を曲げてでも共産党との野党共闘路線をやるかやらないかで民進党内が大論争になり、結果として共産党との共闘は嫌だと長島昭久さん以下民進党に見切りをつけた人がさっさと出ていったことを忘れてはなりません。

立憲民主党の選挙演説に集まった人たち ©getty

 日本はとても完成された民主主義の仕組みを持っています。選挙結果に納得ができない人は日本の民主主義は死んだと主張したいかもしれませんが、それは単にお前らが支持されるような政党のブランド・イメージや、候補者や、政策を掲げられなかったから自民党に勝てなかっただけです。どの小選挙区も共産党が候補者を出すと毎回供託金没収ギリギリのラインぐらいまでは票を取りやがるので野党は分散したら不利だ、だから立憲民主党はきちんと反自民で結託し共産党と候補者調整をして勝てる戦いをするのだ、と堂々と言えば良いのです。ただ、選挙で勝った後、どういう社会を目指すのかという売りの部分は、いまの野党の政策主張からはあまりきちんと見えません。民間企業で言えば、ブランドイメージだけでモノを売ろうとして、肝心の商品の性能や機能には触れられないような状態ですから、右派でも左派でもない政治に関心の薄い中間層には主張は届かないでしょう。 

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高齢者に支援される野党陣営に残されている時間

 リベラルの旗を掲げる自分たちが「正義だ」と言いたい気持ちは良く分かります。政策面で賛同したい内容のものも数多くあるけれども、変なことしでかさずにまずまず政治を適当に回してくれていれば、基本的には国民はいまの日本社会に概ね満足なのです。それ故に、野党は国民のどこに不満があるのか見極めて、単なる政権批判をレッテル貼りつつ進めるのではなく、科学的に数字の裏付けを取りながらやっていく以外に方法はないでしょう。

 むしろ、野党側に不足しているのは科学的態度と哲学(政治思想)そのものじゃないかとすら思います。エビデンスもなく政策主張をしたら目を閉じて疾走するようなものですし、実現するべき社会を見定められなければ国際社会の中で我が国は埋没し、貧しくなっていってしまいます。いまの自民党にそれが実現できているとは思いませんが、自民党ではなく野党に任せてより良い社会が実現できるという気持ちも持てないというのが有権者の偽らざる感情だとするならば、高齢者に支援されているいまの野党陣営に残されている時間はそれほど多くないのかもしれません。

 安倍ちゃんがまた何かやらかしたら話は別だけど。

「日本のリベラル」は科学で再興されるべき

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