縦横無尽にグラウンドを駆け巡る背番号60に、ワクワクが止まらない。中日・岡林勇希外野手。今季は高卒2年目で1軍キャンプスタートを決めると、そのまま開幕1軍入り。不調やけがもあり一度は2軍に降格したが、9月に再昇格すると主に右翼でスタメン出場を重ね、24試合で打率2割5分4厘の数字を残した。

 少々マニアックな記録だが、10代で月間2度の猛打賞という立浪和義新監督以来となる快挙も達成。初めて猛打賞を達成したときは、「興奮して寝れないかもしれない」と語るあどけなさが、高い潜在能力とのギャップにスパイスを加えている。

 かつて広島に育成選手として所属した兄・飛翔(つばさ)さんの影響で野球を始めた。とにかく野球が大好きで、兄を追って入学した三重・菰野高では二刀流でプロ注目選手となった。新人入団会見では投手、野手の二刀流も視野に入れる発言もしていたが、実は「もう野手一本で行くと決めてましたよ」と振り返る。ドラゴンズの先輩がマウンドで投げている姿を見ると「よくあんなところで投げていられるよな……。絶対緊張するよ。無理だわ」と、意外な一面もある。

ADVERTISEMENT

岡林勇希

天才・岡林勇希、コメダ珈琲でテヘペロ

 昨今、“若者のテレビ離れ”が叫ばれるが、岡林にとっては関係なし。バンテリンドームの試合を終え、昇竜館の自室に戻れば、即テレビの電源を入れてリラックス。自ら「生粋のテレビっ子」というように、今クールの『ラジエーションハウス』や『最愛』の話を振ると、野球の話題以上にニコニコしながら教えてくれる。郡司裕也選手から教えてもらった『有吉の壁』で抱腹絶倒してるときもあるとか。

 16歳上の記者が思わずニヤけたのが、「今年はいろいろ覚えたんですよ」というファッションの話。今は、あの選手会長も愛用するブランド「DIOR」に興味津々。この冬は遠征時に持ち歩く大きめのバッグを買うか、ちょっと背伸びした腕時計を購入するか、ガチで迷っている姿が愛らしかった。コロナ禍で頻繁には行けないが、高松渡と名古屋の繁華街・栄へ買い物に行ったりすることもストレス発散になっている。

 最近は、寮で一番仲が良い郡司先輩の退寮が決まって、さみしくてしょうがない。入団時は「郡司さん」と呼んでいたが、「郡さん」を経由し、最近は「郡ちゃん」になった。郡司の部屋へ行き、こだわりのコーヒーをいただく日常が癒しでもある。

 少し前だが、2人で朝早く近くのコメダ珈琲店へ行った。無邪気すぎる岡林は、無料でついてくるモーニングに加えて、カツサンド×2とシロノワールを注文。「おいおい、マジかよ」と驚く郡司先輩に、「いやぁ、メニュー表のカツサンドは少量に見えて注文しすぎちゃいました~」とテヘペロしながら、大量注文の品を次々たいらげて、さらに驚かせた。帰省したときに必ず食べるという、地元・松阪市にある「前島食堂」の鶏肉が絶品とのことで、オフに機会があれば郡司さんと一緒に記者も連れていってもらうことにした。

 岡林は、よくまわりから「変わってる」と言われるそうだが、もう言われすぎて「自分は変わっている人なんだ」と開き直るようになった。でも、打席に立てば常に緊張するし、チャンスで回ってくれば、思わずえずきそうにもなるという。それもそのばず。まだプロに入って2年。目の前のことが何もかも新鮮で、何もかも発見。困難だって、喜びだって、次々に飛び込んでくる。