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「人が好すぎる」ファンが好き(笑)

長谷川 当時はガラガラだった神宮球場のスタンドでフライパンを叩いて応援し、傘を使った応援を考案して、現在まで続く応援の基礎を築いたのは岡田さんでしたからね。

さだ 岡田さんはチームを応援すると同時に、ファンの心も育てたんですね。岡田さんあってのヤクルトファンだと思いますね。もう、彼のことを知らない人も増えているかもしれないけど、岡田さんは今も生き続けていると思います。78年の初優勝のときの彼の泣き顔を見て、ヤクルトファン以外の人も泣いたんじゃないかな?

長谷川 2017(平成29)年、チームがどん底のときにさださんが作った『つばめよつばめ』では「チームもファンも人が好すぎるんじゃない?」というフレーズもありますね。

さだ そうそう、その「人が好すぎる」ファンが好き(笑)。ヤクルトファンの人と会ってイヤな人、一人もいないもん。

長谷川 この歌はヤクルトファンの心情を歌った歌詞が胸に刺さる名曲です。今年、『Pen+』のさだまさし特集号「全部、さだ。」で、僕も原稿を書かせてもらったんですけど、そこでは「ぜひ『つばめよつばめ』を、ヤクルト終身名誉愛唱歌に」と訴えました。まだ実現していませんが、僕は諦めていません(笑)。さださんは、その後も折に触れてこの歌を歌うことはあるんですか?

『つばめよつばめ』をずっと歌っていた

さだ ありますよ。優勝を決めた10月26日の試合。僕はタブレットで見ていたんですけど、村上選手が最後にファールフライを捕って、試合終了。マジック1になりましたよね。あの瞬間は、「よし、これで王手だ!」と思いながら、「今こそ奇跡を我が手に」って、『つばめよつばめ』のサビを歌っていました。特に、去年はずっと歌っていましたよ。

長谷川 なかなか勝ち星をあげられず苦しんだ昨シーズンこそ、この曲は沁みますね。

さだ そりゃ、そうですよ。「半分くらいだったら勝てるんじゃない?」って(笑)。

長谷川 さて、いよいよクライマックスシリーズ、日本シリーズが始まります。去年までのことを考えると「よくやった、あとはオマケなんだからのびのびと頑張れ」という思いと「ここまできたら、絶対に日本一に!」というアンビバレントな思いもありますが、さださんはどんな心境ですか?

さだ おっしゃる通り、僕もまったく同じ気持ちです。僕としてはもう達成感でいっぱい。もう、僕は何もいらない。あとは余禄ですよね。でもやっぱり、ここまで来たら勝ちたいという思いもありますけどね(笑)。

「絶対大丈夫」はミュージシャンとしてよく理解できる

長谷川 最後に、改めて今年のリーグ制覇を総括していただけますか。

さだ 本当はみんな弱いんです。弱いけれども、みんなの力が集まれば何かができる。たとえば4人集まって、全員人差し指だけで椅子に座っている人を持ち上げられるみたいなことってあるじゃないですか。今年のヤクルトの優勝はそんな気がするんです。ファンもそうだけど、選手も内心では驚いているんじゃないのかな? そうでなければ、「絶対大丈夫」って自分に言い聞かせながら打席に入ったりしないですから(笑)。

長谷川 高津監督が発した「絶対大丈夫」は、選手にとっても、ファンにとっても勇気を与える魔法のフレーズとなりましたね。

さだ それはミュージシャンとしてよく理解できます。例えば、シンガーののどの調子が悪いとき、バックバンドがすごくいい演奏をしてくれるんです。そして、それに触発されてきちんと声が出るんです。心の一点を支える何かがあれば、みんなの心は一つになれる。高津監督はそれを見つけたんでしょうね。そして、それを見つけられるのが名監督なんでしょうね。本当にいいチームが、見事に勝利しましたよね。

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