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絶対的エース・山本由伸で初戦勝利…オリックスがロッテの“勢い”を止めるために必要なこと

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/11/10

 都内のとあるホテルで、日韓の歴史認識問題について取材を受けた時の話である。「お忙しいですか」と聞かれたので、「そうですね。最近は野球関係の取材もありますからね」とお答えすると、記者の方がため息混じりにこう呟いた。「先生も、もうそっちの世界に行ってしまわれましたからね」。いや、まて「そっちの世界」ってどこやねん。そもそもどうして、ため息をつく必要がある。本業も一生懸命やってるやん。

 とはいえ、忙しい事は事実であり。こうして今日も文春野球さんにコラムを書いている。驚くなかれ、既にこの2週間で3回目のコラムである。かつてある先生があまりに頻繁に論文や評論を発表するので、口の悪い人が「週刊誌」だと陰口を叩いていたけど、いささか過剰な表現である事を承知で言えば、これではもう「日刊スポーツ紙」状態だ。

 とはいえ、これだけ書いていると、ネタも尽きてくる。既にお気づきの方もおられるかもしれないが、実はこのコラム、オリックスが勝ち進むにつれて、意図的に文章のスタイルを変えてきた。つまり、今年前半までの本コラムは、時に韓国の話を挟み(いやほぼそれしかない時もあった)、或いは大学院での学生指導の話を入れ込んで文字数を稼ぎ(学生の皆様お元気ですか)、無理やりオリックス話につなげる、という荒業を採用して来た。いわば自分が持っている「ファン以外」の部分で勝負してきたことになる。

 しかし、今年後半、チームが首位に立ってからは、「ファン以外」の部分はできるだけ封印し、「一人のファン目線」で文章を書く事に、徹してきた(つもりです)。それは例えていうなら、筆者が一人のライターとして、変則モーションで投げるだましだまし投げる技巧派投手から、まっとうな野球コラムニスト(なのか)として本格派投手へと脱皮する過程であったといっても、いいくらいである。偉いぞ俺、成長したな。

 だが、シーズンも押し迫った11月。こうも連投が続くと、書ける話がそうそうある筈が無い。だとすれば、たまには甞ての変則モーションに戻してもいいだろう。いや、頼むから戻させてください。もう体力が持ちません。という事で韓国です。

一時のイベントによる支持の上昇は、時には大きなブームを巻き起こす

 周知のように韓国では、現在、来年の3月9日に控える大統領選挙に向けて、選挙戦が本格化しつつある。今日の韓国は、アメリカ同様、国内が左右のイデオロギーにより大きく分断された状況になっており、この対立軸に沿って、進歩派の与党「共に民主党」と、保守派の野党「国民の力」の2大政党が覇を競い合っている。大統領選挙の有力候補も当然、この2大政党から選ばれた人々であり、両党はつい先日までこれを選出するための予備選挙を行って来た。

 先に予備選挙を終えたのは「共に民主党」であり、同党は10月10日、ソウル首都圏の京畿道知事である李在明をその候補者に選出した。対抗する「国民の党」の予備選挙はこれより遅くまで続けられ、ようやく11月5日、前検察総長である尹錫悦を自らの候補者として選出した。

 同じ大統領選挙であるにも拘わらず、野党側の候補者の選出が遅れたのには理由があった。それはて、最終的な大統領選挙の投票日まで4カ月もある状況の中で、予備選挙を遅らせた方が選挙戦に有利だ、という計算があったからだ。理屈はこうだ。

 例えば、先日行われた、我が国の総選挙においても、それまで凋落傾向にあった自民党の支持率が、直前に総裁選挙を行った事により上昇に転じ、結果、当初は予想されていた大幅な議席の減少を防いだ現象があった。選挙の直前に次の首相になるであろう「党の顔」を選ぶ大きなイベントを行えば、当然、マスメディアはこれに飛びつき、その様子を大々的に報道する事になるからだ。それにより、党は自らの政策を国民に訴え、自らのイメージを刷新する事もできる。この様なイベントにより注目が集まり、支持率が上昇する現象を政治学では、「イベント効果」或いは「コンベンション効果」などと呼んでいる。

 とはいえ、人の関心は移り動くものであり、故にこの様なイベントの効果は、時間の経過と共に低下する。だから、できるならイベントはできるだけ「本番の勝負」の直前に設定した方が良い。そしてそのセオリーに従って、今回の大統領選挙において韓国の2大政党も、当初は予定されていた予備選挙の日程を後ろへ、即ち、本選挙の日程の近くへと動かす事を選択した。まず与党「共に民主党」が今年7月に、元来は9月に予定されていた予備選挙を10月へと延期した。しかし、この様なゲームは常に後攻が有利である。当然、これを受けて野党「国民の力」は、予備選挙をさらに後ろの11月にまで延期した。これを受けて与党には、再度日程を後ろ倒しにしようとする動きがあったものの、既に事実上選挙戦がはじまりつつあった状況の中、各候補者の思惑が絡んで、これを実現することはできなかった。