そして今、その結果が支持率として現れている。「国民の力」が予備選挙を終えた直後、韓国社会世論研究所が行った世論調査によれば、尹錫悦の支持率は43%。対する「共に民主党」の李在明は31.2%だったから、実に12%近い大差になっている。因みに「国民の力」の予備選挙結果が出る直前、11月2日~4日に韓国ギャラップが自由回答形式で行った世論調査では、尹錫悦の支持率は24%で、李在明の26%に後れをとっていた。調査会社や形式が異なり、単純な比較は不可能であるが、それでも如何に直前に行われた予備選挙というイベントの効果が大きかったかがわかる。
この様な状況について、所詮はイベントがもたらした効果など、一時的なものであり、約4か月後の本選挙まで続きはしない、という見方もある。しかし厄介なのは、この様な一時のイベントによる支持の上昇が、時には大きなブームを巻き起こすことだ。この点、韓国において有名なのは、2002年大統領選挙における「盧武鉉現象」である。当初は泡沫候補だと見られていた盧武鉉は、予備選挙の中で台頭すると、これに勝ち抜いた事で、更に大きなブームを巻き起こした。重要なのはこうして時に、イベントにおける勝利が、支持者の高揚感を生み、その高揚感がさらなる運動の高まりをもたらしていくことである。そして、支持者による運動が盛り上がると、これにより士気を高めた候補者のパフォーマンスも向上する。こうして2002年、盧武鉉は最終的には、当初は圧倒的に有利だと言われていた野党候補・李会昌に打ち勝ち、大統領に当選した。
実は自らが「不利な状況」にあることを思い出させればいいのである
直前に「イベント」があり、それにより大きな「勢い」がついている。逆に対する側では、先立つ「イベント」における興奮は過去のものとなり、何時しか受け身の対応を迫られる。だとすれば、待ち受ける王者は何を行うべきなのか。
その答えは簡単だ。彼らが勢いづいているから状況だからこそ、まずはその勢いをできるだけ早く止めてしまえばいいのである。そうして彼らをして現実に立ち戻らせ、自らが「不利な状況」にあることを、思い出させればいいのである。
その為に何よりも必要なのは初戦の勝利である。例えば、それは大統領選挙ならそれは最初の公開討論会である。ここで相手を追い込むことができれば、ブームは止まり、逆に攻守はところを変える事になる。ここまで上手く行ってきたからこそ、突然訪れた苦境は、相手候補者の焦りを生む。そして焦りが相手のミスを生むならば、もはや流れはこちらに来たも同然だ。他方、ここで彼らに勝利を許すことになれば、「イベント」は更に続く事になる。そしてこれ以上、その勢いが増せば、その扱いはますます厄介になる。
だからこの戦いで所詮は極めて重要だ。そしてオリックスはこの大事な初戦に、山本由伸を立てて臨む。優勝によるアドバンテージに絶対的エース。初戦に勝利して2勝の差をつけてしまえば、残り試合をひたすら勝ち続けなければならない事が如何につらいかを、知っているのは相手の方だ。そうしてその辛かった記憶を思い出させれば、自然にその動きはぎこちなくなるだろう。だから、まずは全てをこの一戦につぎ込んで勝利をおさめ、流れを引き寄せればいいのである。
という事で、皆さん、CSファイナルステージ開幕です。吉田正尚だって戻ってくる。ここは王者らしく、彼らの勢いを堂々と受け止める事にしようではないですか。だって、僕たち「優勝チームのファン」なんですから。
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