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講師22年目の私が見習いたい、カープ・白濱裕太の“続ける力”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/11/11
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「何かあった時には白濱がいる」という安心感

 由宇練習場に行けば(ここ2年は無観客が続いているが)、一回り以上も年の離れた選手に交じってプレーする白濱の姿を見ることができる。白濱は、こうした若い選手たちにアドバイスをするという役割も担っているのだが、何より白濱の特筆すべき点は、そのキャッチングの上手さにある。まず捕球時にミットがほとんど動かない。うまく拍手を打てた時のような、パーンという乾いた音が響く。こうした白濱の技術は、一軍で何かアクシデントがあった時に必要になる。それをまざまざと思い知らされたのが、昨年9月10日のヤクルト戦であった。

 2対1の僅差で迎えた9回表。8回裏に坂倉将吾の代打として出た會澤が、そのまま守備に就いた。ところが廣岡大志のファウルボールが會澤の顔面を直撃、そのまま担架で退場する事態となったのである。ベンチに残っている捕手は白濱のみ。急遽マスクをかぶった白濱は、投手フランスアをうまくリードし、無失点に抑えた。経験の少ない若い選手であれば、こうはいかなかったかも知れない。「何かあった時には白濱がいる」というのは、物凄い安心感を与えてくれるものだと多くの人が気付かされたし、白濱が現役を続けている主な理由もそこにあるのだと思う。

 しかし長年一軍に上がれず、華々しい活躍もできないとなると、多くの選手は心が折れてしまうだろう。一方白濱は、18年目のシーズンを終えて「僕は、(自分から)引退するとかいう立場ではない。必要とされるときに貢献をしないといけない」と語っていた(※注1)。また以前、「結局は自分次第で、くじに自分の人生を左右されたくない」という理由から、おみくじは引かないという話もしていた(※注2)。

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 思うに、白濱の最大の長所というのは、そのタフな精神力にあるのではないだろうか。自らの立場を理解し、いつ一軍から必要とされてもいいように準備を重ねる。この状態を続けるというのは、並大抵の精神力ではできないはずだからだ。

 私自身に話を戻せば、白濱ほどの誇れる技術があるわけでもない。しかし「これでよかったのか」と人生を振り返る時、「少なくとも仕事を続けることはできているのだ。とにかく目の前の生徒に全力で向き合って、仕事を全うしよう」と思えるようになったのは、白濱から受けた影響も少なからずある。今後もその「続ける力」を見習っていきたいので、白濱には一年でも長く現役を続けていって欲しいと願っている。

©オギリマサホ

※注1:「サンスポ」2021年11月8日
https://www.sanspo.com/article/20211108-YMDASX7UOZJZ5DEJHC6T2SINNI/

※注2:「週刊ベースボール」2019年1月20日
https://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=046-20190128-07

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