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少年漫画の世界から見る2021年オリックス・バファローズの「物語力」

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/11/11
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 全国のオリ姫・オリ達の皆様、オリックス・バファローズのファイナルステージ初戦白星おめでとうございます!!

 ただいま11月11日(木)深夜0時28分です。文春野球さんに今年初参戦した僕はよくルールを理解しておらず11月7日(日)のコラムが今年最後の登板だと思っておりました(笑)。前回コラムの文末で今年のバファローズとプロ野球にお礼までしちゃったのに! まさか文春野球オリックスコラムチームまでCSファイナルステージに進出するとは! なんて恥ずかしい勘違いなんだ!という気分でいっぱいの夜を迎えているわけです。でもオリックスの選手も全員が人生初のCSファイナルステージ。僕も気分をシンクロしてこの「初体験」を目一杯楽しもうと思って筆を執っております。

パ・リーグを舞台にした「少年漫画の主人公の物語」のよう

 千葉ロッテ・マリーンズ本当に強いですよね。超人エチェバリア・快足荻野・藤岡・中村を中心とする鉄壁の守備陣。簡単にアウトにならない粘り強い打線。恐るべき助っ人主砲2門、堅固なブルペン陣。そんな千葉ロッテ・マリーンズを表現するなら適材適所が徹底された「走攻守に極めて高い完成度のチーム」と言えます。なので本当にロッテ戦は観ていて疲れます。「大勝」とか「快勝」などシーズン中もあまり記憶にないです。

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 対するオリックスはとても未熟で成長途中の「完成度の低い」チームです。選手層もまだまだ薄く、ブルペンも盤石にはほど遠く、助っ人補強は誤算続きで、試合運びもまだまだ幼稚さばかりが目立ちます。

 それでもオリックスは初戦に勝ちました。奇跡的な復活を果たした吉田正尚の圧倒的な存在感。T-岡田の勝負強い一打。前半戦苦しみ抜いた若月健矢の強肩とナイスリード。そしてもちろん絶対エース・山本由伸の異次元の完封劇。今日もオリックスの戦いは「ドラマ」に事欠きません。

 そう、2021年の「新生中嶋オリックスの物語」ってパ・リーグを舞台にした「少年漫画の主人公の物語」のようにドラマチックだったと思うのです。

・オリックス生え抜きの中嶋聡の帰郷。
・中嶋を呼び戻し抜擢したこれまた生え抜きの福良淳一GMの慧眼。
・不遇を託っていた杉本裕太郎への「ラオウ、一緒に行くぞ」からの恩返し。
・生え抜きリリーバー・平野佳寿の帰国。
・何年も不振続きだったT-岡田の復活。
・宮城大弥の鮮やかすぎる台頭。
・登場した時は完全に足手まといだった紅林弘太郎が最終的にはチームの救世主に。
・宗佑磨、福田周平、安達了一のコンバート成功と宗の覚醒。
・レジェンドにして「代打の切り札」アダム・ジョーンズの献身。
・完全に覚醒した「異次元エース」山本由伸の快進撃。

 110試合を消化する頃までにこれほどのドラマを積み上げ、一気にペナントを駆け抜けるかと思われたところでさらに少年漫画の主人公であるバファローズの「物語力」はギアが上がる。

・最後の切り札だった「新キャラ」ランヘル・ラベロが物語に登場することなく死球離脱
・西浦颯大、悲運の引退。
・主砲・吉田正尚の故障離脱からの大苦戦&首位陥落。
・主砲・吉田正尚の復帰からの打線復活&首位奪還。
・主砲・吉田正尚、パ・リーグの大帝国ホークス戦でまさかの死球を受け長期離脱。
・覚醒した紅林弘太郎までもホークスの絶対エース・千賀滉大の死球で離脱。
・帝国のエース千賀滉大、次のロッテ戦で7回1安打完封劇。世界にバランスをもたらす。
・紅林弘太郎の奇跡的復帰とさらなる覚醒。
・ベンチに掲げられた吉田正尚のユニフォーム。
・宗佑磨のツーランとベンチでの「戦士の涙」。
・ラスト2試合でまさかの新キャラ・ラベロが登場。
・最終戦での山本由伸の神がかったメンタルと完封劇。
・開幕戦で山本由伸に大迷惑をかけた紅林弘太郎が最終戦でミラクル恩返し。
・若手選手がどんな失敗をしても「不動如山(うごかざることやまのごとし)」を崩さず、無駄なベンチワークを「其徐如林(しずかなることはやしのごとく)」一切排除してきた中嶋聡が一年の最終戦最終回で見せた「其疾如風(はやきことかぜのごとく)」「侵掠如火(しんりゃくすることひのごとく)」のツーランスクイズ。まさに「風林火山」を体現する名将っぷり。

 そしてついに25年間低迷し続けた祖国はヒーローたちの手により栄光の瞬間を迎え、次なる大きな栄光に向かい新たなステージでの戦いの幕が上がった。

 そして迎えたCSファイナルステージ初戦の観客席にはチームを見守る西浦颯大の姿が……。

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