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私の中のSHINJOも帰ってきてくれた

 かくして迎えた11月4日、新監督就任記者会見の日です。複数のテレビ局が生中継をする中、ここは地元のHTBを選択。妙にハラハラ、ドキドキしていました。動いて喋る彼の映像をちゃんと観るのは本当にいつ以来になるでしょう。49歳の新庄剛志。一体どんな風に見えるのか……。

 あれ?

 変わってない!

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 整形手術をしたことを知らなかったうちの老父は、15歳も年齢が上がればそれはやっぱり人の顔は変わるさ、程度に思ったらしいんです。それくらい、会見場に現れた彼は昔のままの新庄剛志に見えました。しかしそれにしても不思議です。えー、だって、前は確かにもっと全然違った顔の写真になってたじゃん!

 あっけにとられて見つめるテレビの中で、彼の笑顔が弾けています。野球の話を、ファイターズの話を、新庄剛志が身を乗り出して喋ってる。2004年から2006年までそうだったように。どこかの知らない人じゃない。SHINJOだよ!

 それから1週間余り。就任会見で、その後のインタビューで、森本稀哲とのYouTube対談で、そして若手選手達の秋季キャンプで。新庄監督、じゃなかったビッグボスの野球観・指導論がこれでもかとばかり矢継ぎ早に繰り出されて、野球ファンの目を見張らせている訳なのですが、その受け止め方がファイターズファンとそれ以外の人とではやや異なっているような印象があります。

 えっ彼がこんなに細かく語るの、こんなに厳しく指導するの、という反応を他チームファンのツイートなどではまま見かけるのですよ。でもファイターズファンの反応はそうでもないんですよね。精力的な動きっぷりへの新鮮な驚きこそあれ、「彼が」そうであるということにはあんまり驚いてない。だって、SHINJO、そういう選手でしたもの。

 ビッグボスが語る度に、ああそうだ、そうだったんだと思い出します。GAORAの近藤祐司アナウンサーがインタビューの最後を「ファンへのひとこと」をもらって締めくくろうとしたら、即座に痛烈なダメ出しを食らうこととは相成りました。そんなお決まりの陳腐なパターンなんてという訳です。たちまち甦る昔の思い出。そうだった、ヒーローインタビューの第一声を「そうですね」で始めるなって言ってたんだよ。そういう人なんだよ。憶えてる。みんな憶えてる。

 ビッグボスに率いられた来年のファイターズがどんなチームになるのか、それはまだ何も判りません。でも、今もう既に何回ありがとうを言っても言い足りないという気持ちになってます。

 新庄剛志がビッグボスになってファイターズに帰ってきてくれたから。

 私の中のSHINJOも帰ってきてくれたんです。

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