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これから必要なのは癒やしではないと覚悟を決めて

「長かったです。投げられない時期に試合を見るのがつらかった。もう1度、1軍のマウンドに立っていることをイメージして心の支えにしていました」

 シーズン終了後の11月に参加した「みやざきフェニックス・リーグ」でようやく球数制限が解除された。ここでの好投が佐々岡監督の目に留まり、春季キャンプの1軍スタートも内定。念願の1軍復帰が手の届くところまで来た。シーズン中も1軍で過ごせれば、遠征機会は間違いなく増える。それはハムスターとの別れが迫っていることを意味していた。

 そして、年末年始に埼玉に帰省した際に、一緒に連れて帰っていたハムスターを実家に置いていくことにした。「ちゃんと20度以上にしておいてね」「絶対にストレスを与えないで」「エサのあげ方は……」「大切に育ててよ」。両親に飼育方法を事細かく伝えた。寿命を考えれば、最後の別れになるかもしれないとまで思った。それでも、これから必要なのは癒やしではないと覚悟を決めた。

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 シーズン中は両親から送られてくるしろまるの写真を見て心を落ち着かせた。両親いわく「しろまるは小さい頃の昂也にそっくり」。落ち着いていながらも活発。子は飼い主に似るのかもしれない。

 そして勝負の年と位置づけて迎えた今季、しっかりと完全復活を印象づけた。開幕ローテーション入りこそ逃したが、後半戦は先発を死守。5勝にとどまったものの、試合を崩さない粘り強さを見せて、来季の先発争いに向けても十分なインパクトを残した。リハビリ期間の苦しさも少しばかり報われたことだろう。

 覚悟の別れから1年が経とうとしている。今年の年末年始には、ようやくしろまると再会できる。「実家に帰るころには寿命が来ているかもしれないので、あまり期待しないようにしています。でも、いまのところは何とか元気なので良かった……」。頑張れ、しろまる。すっかり元気を取り戻したご主人に、もうすぐ会えるぞ。

 河合洋介(スポーツニッポン)

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