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「どちらかの4勝1敗で終わる」ヤクルト・オリックスのOB、大引啓次が占う日本シリーズの行方

文春野球コラム 日本シリーズ2021

2021/11/21
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中嶋さんは「何か常に頭を悩ませてる」

 一方の中嶋監督とは、日本ハムに在籍した2年間、同じユニフォームを着ている。当時の中嶋監督はバッテリーコーチ兼捕手として、出場試合数こそ少ないながらも現役を続けていた。

「コーチ兼任ですけど、ロッカールームは選手の所にあるんですよね。(日本ハム)2年目の時はロッカーが近かったのでいろいろとお話しさせてもらったんですけれども、(先発)ローテーションのことだったり、何か常に頭を悩ませてるというか、チームのことを考えてる印象でした。だから、コーチの人が選手ロッカーに1人いるみたいな感じでしたね」

 年齢的には既に40代半ば。とはいえコーチ風を吹かせるようなこともなく、若い選手に対しても、基本的には1人のプレーヤーとして接していたという。

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コミュニケーション上手な中嶋監督

「キャッチャーの近藤(健介、現在は外野手登録)っているじゃないですか? 当時はまだ20歳そこそこだったんですけど、彼なんかにも対等に話してる感じがありました。コーチっていう肩書きがありましたけど、いい意味でイチ先輩、イチ後輩っていう間柄だったように思います。だから今も(監督として)うまくコミュニケーションを図れてるんじゃないでしょうか」

 その両監督が相対するこの日本シリーズ。昨日の開幕を前に、大引氏はこんな見方をしていた。

逆シリーズ男をつくる戦術に長けるのが中嶋監督、投手運用は高津監督

「短期決戦でときどき耳にするのが、1人のバッターを徹底的にマークして黙らせる、“逆シリーズ男”をつくるっていうことなんですけど、そのあたりはキャッチャー出身の中嶋さんの方が心得ているという印象ですね。だから、たとえば村上(宗隆)君に対して最初は徹底してインコースばかり行くんじゃないかとか、勝手に思ってます。ただ、投手交代に関してはピッチャー出身の高津さんの方が長けてるのかなと思いますし、この日本シリーズは延長戦があるということなので、ピッチャー交代のタイミングが明暗を分けるなんていうこともあるかもしれないですね。采配で一番難しいのは投手交代だと思いますし、流れを変える可能性がありますから」

 その上で、大引氏が占うシリーズの行方は──。

「どちらかの4勝1敗で終わる」

「私の予想は、短期決戦で終わっちゃうかなと。どちらかの4勝1敗なんですよ、予想は。打線はヤクルトの方が上という印象を受けますけど、短期決戦でオリックスの投手陣を打ち崩せるかっていったら、そこまでではないのかなと。投手力だけじゃなくて内野手、外野手の守備力、捕手の配球、トータルのディフェンスで考えるとオリックスの方が上なんじゃないかなと思います。私がこれまで培ってきた野球観だと、やっぱりディフェンス力のある方が強いっていうところで、オリックスが第1戦に勝てばオリックス。逆に1戦目で奥川(恭伸)君が山本由伸君に投げ勝ったら、ヤクルトのワンサイドもあると思います」

 ちなみに大引氏は、シリーズのキーマン、あるいはラッキーボーイになる存在として、両チームで3選手の名前を挙げている。

塩見泰隆、福田周平、両1番打者がキーマン

「打線のキーマンとしたら、両チームの1番バッターじゃないですかね。ヤクルトだったら塩見(泰隆)君、オリックスだったら福田(周平)君が、どれだけ出塁するか。第1戦でいきなり塩見君が塁に出てかき回したら、ヤクルトの4連勝もありえますよ。もし両方とも眠ってたら、4勝3敗もあるかもしれないですけど、たぶんどちらかは起きてると思うんで。ラッキーボーイが出てくるとしたら、オリックスは宗(佑磨)君かな。ヤクルトはラッキーボーイもキーマンも、塩見君になりそうです」

 奥川と山本の投げ合いでロースコアの展開となった昨日の第1戦は、その「ラッキーボーイ」宗の2点タイムリーで9回に追いついたオリックスが、続く吉田正尚のサヨナラ打で先勝。大引氏の予想どおりなら、オリックスがこの勢いのままにシリーズを制することになる。ただし、大引氏には予想とは別の“期待”があるという。

11月30日のタイブレークまでやって「長い1年」を堪能してほしい

「責任ある立場ではないので好きなことを言わせてもらってますけど、ぜひ私の予想を覆していただきたいです。私はどちらかのワンサイドですぐ終わってしまうと言いましたけど、ここまで1年間長くやってきましたんで、この際、日本シリーズも第7戦、8戦までやって『本当に長い1年間やったなぁ』っていう、思い出に残るシーズンにしてもらいたいですね。最後(11月30日)までやって決着がつかなくて、タイブレークっていうのも面白いじゃないですか。ぜひ私の予想を裏切ってください」

 大引氏の「予想」どおりオリックスがワンサイドで25年ぶりの日本一に輝くのか、それとも「期待」どおりに最終戦までもつれるのか。ヤクルトにとって「オリックス」とは26年ぶり、「バファローズ」とは20年ぶりの日本シリーズは、まだ始まったばかり。燕党としては一枚岩になったチームスワローズは絶対に崩れないと信じ、最後までじっくり楽しみたいと思っている。

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