昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/11/02

「あのね、一回、横田基地に『取りに来て』と言われたことがあったの。でも危ないと思って行かなかった。裏切られたらアウトでしょう」

 単なる当てずっぽうでもなければ、都市伝説の類でもないのだ。

「横田基地と繋がりのある、古くから知っている宝石屋の社長がいた。その社長から、あるときこう誘われた。

『横田基地行く? 商品(覚醒剤)が着くから。他の組織も入札しているみたいだけど、だいたい30コ(キロ)くらいは取れると思うよ』

 でも、俺はワナかもしれないと思って断ったの」

米軍基地-北朝鮮ルートで一級品が持ち込まれる

 前出の元税関幹部の男が証言するように、松本は、米軍基地と北朝鮮との間で直行便が往来していることなどは知っている。

「なぜ直行便があるの? 横田だけじゃない。沖縄だってある。その社長は、宝石など貴金属の取引で横田基地の人間と繋がりがあったことも事実。だから確実にこのルートはあるんだよ」

「軍兵士が私物に混ぜて本国から持ち込むレベルの話ではない?」

「違うよ。北朝鮮は自国の工場で造れるんだよ。だから大量にできる。

 もちろん品質も一級品。北朝鮮産のシャブは結晶一つがこぶし大の塊なんだから。見たことないでしょ?

 俺らが見るのは、そんな磨く前のダイヤモンドの原石のような塊ばかりだ。小さくて足の親指くらい。色? ガラスみたいに透明な結晶が良いってイメージでしょ。でも逆に良くない。むしろ真っ白くて硬い水晶のようなシナモノが最高級品だ。そして俺らは、その塊を細かく砕いて市場に出していた。

 北朝鮮は工場で、機械で製造している。俺はヤツらに『“味の素”を作る機械がシャブに応用できる。だから中古でいいから仕入れられないか?』と言われたことがある。

 聞けば、それがシャブの製造に『一番適している』と。原料を入れれば、“味の素”と同じくスイッチ一つで結晶体になって出て来るそうだ。簡単に良質のシャブができるんだって、何も手を加えずにね。

 20年前、俺は若い衆に何回も北朝鮮へ取りに行かせたから事情は良く知っている。当時はね、中国から送り(郵送)もできたから。もちろん腹に巻いても大丈夫だった。郵送で空き部屋に送る? いやいや、そんなことしないよ。愛人とか、ちゃんと人が住んでる知り合いの家に送る。もちろん中身はテキトーに言う。『友達のロレックスのコピーが届くから開けないで』と言えば、普通は開けないから」

【前編を読む】大統領夫人と製造した“シャブ”を日本へ密輸した黒幕…石原裕次郎のクラスメイトだった男による「覚醒剤輸入作戦」の実態

この記事の写真(2枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー