マスク着用により歯並びも悪化
実は、マスク着用によるリスクはまだある。中長期的な影響として挙げられるのが、「歯並びの悪化」と「誤嚥」だ。
そもそも歯並びは口周りの筋肉や、舌の筋肉によって適度な圧がかけられることで、綺麗に保たれる仕組みになっている。
「普段、安静にしているときも唾液を飲み込むときも、舌は口の中の上顎のくぼみにくっついているものです。
これにより舌が内側から外側に圧をかけ、上顎を広げ、歯並びを整えているのです。ところが、マスク着用に伴う口呼吸で口がずっと開きっぱなしになっていると、舌の力が弛緩して下顎のほうに落っこちてしまい、歯並びへの作用が働かなくなります。また、口を開けることで上唇や頬の筋肉も緩み、さらに歯への圧が低下する。こうした状態が長く続くと、次第に出っ歯になってしまうのです」
特に幼少期からマスク着用が当たり前になっている子どもは、将来的に歯並びに影響することが心配されているという。
「お子さんには、家にいてマスクが取れるときは、口を閉じて鼻で呼吸するよう促してあげてください。また、お子さんと一緒に“あいうべ体操”をして、口周りの筋肉を動かすようにするとよいでしょう」
口周りの筋力の低下で誤嚥のリスクも
さらに口周りの筋力の低下は、誤嚥のリスクも押し上げる。
「食べ物を口の奥に送り込んで呑み込むという一連の動作には唇、頬、舌のそれぞれの動きの絶妙なバランスで成り立っています。飲み込む力の衰えは老化によりある程度仕方ないことですが、そこにきて人との会話が減ると口周りの筋肉が低下し、このバランスが崩れ、誤嚥のリスクを助長してしまうのです。誤嚥が怖いのは、口の中のばい菌が誤って気管に入ることで、命に関わる誤嚥性肺炎を起こすこと。普段から口周りの筋力の維持と、口の中を清潔に保つことは命を守るうえでも大事なのです」
これらを予防するためにも、あいうべ体操や唾液腺マッサージは日常で活用したい。高齢者であれば、口の中の乾燥によるむせを防ぐためにも、唾液腺マッサージを食事前ごとに行うのも効果的だという。