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儲かりそうだからという安易な意識で
検査を通じて改めてわかったのは、佐々木が予期していたような危うさだった。1年前には1000億円程度だった預かり資産が、仮想通貨の相場上昇につれて急増し、7000億円にもなっていた。それなのに経営陣は他人の資産を預かっているという意識が乏しかった。中には役員が意図的に高値の買い注文を出すことによって、仮想通貨の価格を吊り上げる相場操縦めいたことも行われていた。利用者が反社会的勢力の人物であることがわかっていながら取引を継続しているケースもあった。顧客の資産と自社の資産の分別管理ができていないのは、ざらだった。どの事業者も金融にかかわっているという意識に乏しく、儲かりそうだからという安易な意識で参入してきたのは明白だった。「健全に育ってほしいとは思っていましたが、全般的に軽いところが多くてね」。佐々木はそう言って呆れていた。
コインチェックのスキャンダルを目の当たりにし、しかも金融庁の厳しい検査にさらされて、仮想通貨の「みなし登録」業者は耐えられなかった。一斉検査の対象となった16社のうち12社が登録の申請を取り下げ、1社については金融庁が登録を拒否した。儲かりそうだからと安易な気持ちで参入してきた業者は、プレッシャーに心が折れた。金融庁から見て、暴力団のような反社会的勢力との関与が濃厚な業者もあった。
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