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 こうした欧米との温度差は、車内放置事故に対する社会的な関心の差でもあるだろう。米国において、車内での熱中症による15歳未満の死亡事故は2010年から2018年までの平均で年間40件近くあり、法制面からのアプローチが強く求められてきた。一方国内では、熱中症全体で見ても同期間・同年齢層における死亡事故は年間平均3件に満たず、事例の少なさゆえか世論として「保護者・親の責任」で片付けられる傾向にある。

 しかし、死亡事例は多くないとはいえ、救急搬送は頻発しており、事故の可能性は日常に潜んでいる。技術によって予防しうる「万が一」を、自己責任に帰してしまうのは、文明的態度とは言いがたい。

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先進システムを導入する韓国メーカー

 現状、国内車種に採用されているシステムは「ドアロジック方式」と呼ばれるものであり、ドアの開閉記録にもとづきエンジン停止時にアラートを発するタイプである。もっとも一般的なのは、後席ドアを開閉してからエンジンをかけると、走行後のエンジン停止時に、警告音とともに「後席への置き忘れにご注意ください」といった案内が表示される形だ。

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 このタイプでも注意喚起としては十分であるが、荷物と子どもの区別なくアラートを発するため、長く使っていれば警告音そのものに慣れてしまうことも考えられる。さらに、送迎バスのように多数の子どもを乗せているケースでは、見落としを直接予防することにはならないだろう。

 対して、先進型のシステムとしては、ヒョンデやキアが導入している「センサー方式」がある。超音波センサーにより、停車後の車内における動きを検知し、ホーンやスマートフォンアプリによる通知を行う。

 今後の応用性を考えれば、やはりセンサー方式が望ましい。近い将来、超音波センサーのほかレーダーやカメラを用いたモニタリングシステムにより、乗員の体温に連動したエアコン制御や、自動の緊急通報などが可能になれば、事態の深刻化を防げるケースも増えるはずだ。

 センサー方式など新たな検知システムの導入について先のメーカーに尋ねたところ、ホンダからは「状況を鑑みながら検討」、トヨタからは「電波や画像などを含むセンサー方式も検討しているが、導入に向けては、技術的な長所と短所等を含めて総合的に検討」という旨の回答が返ってきた。

「欧州基準の安全性」には「センサー方式」が必須に

 現状では慎重な構えを示す国内メーカーだが、安全性能評価の基準から言えば、センサー方式への移行は必定である。ユーロNCAPが原案として示すCPDの評価基準においては、国内車種のようなドアロジック方式の評点は極めて低く、2025年以降はそもそも評点が与えられなくなる見通しである。