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地域で融通することもできないほどの供給不足

 しかし、本当の問題はそこではなく、現在なお相当数の品目の薬剤が末端の薬局に届かないばかりか、地域で融通しようにもモノがそもそもないので回しようがないという事態にまで発展しています。先日、ジャーナリストの小笠原理恵さんも記事にしていましたが、血栓症や人工透析にも使用される抗凝固薬「ナファモスタット」や副腎皮質ホルモン製剤の「デキサメタゾン」など、特定疾患の処方では定番となるキードラッグも生産調整を経て実質的に出荷停止となっています。

ジェネリック医薬品の供給が「不安定」になった理由とは? メーカー幹部からは怒りの声
https://nikkan-spa.jp/1787689

 さすがに供給が止まってしまうのはマズいだろうということで、厚生労働省でも「どうにかせい」という話が出て、薬品流通の正常化に関する話し合いが進んだものの、製薬会社にも薬品卸にも薬局・薬剤師にもどうにもならない問題があるよねという確認だけがなされて議論は頓挫。そうこうしているうちにまた4か月ぐらい経ってしまって、いよいよにっちもさっちもいかなくなってきたぞ、というのが現状です。

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 すでに議論もされておりますが、主に問題となるのは厚労省の医薬品行政にまつわる移行期の混乱に、製薬会社の不正・不祥事が重なってモノが止まってしまったことです。後述しますが、事件や災害が起きてお薬の生産そのものがストップしてしまえば、当然市中在庫はなくなるわけで、薬剤師さんが頑張ったところでどうにもならないのは当然です。

厚生労働省が考える社会保障費削減の対策

 そもそも我が国の社会保障費はどんどん増えていき、人口のボリュームゾーンである団塊の世代が後期高齢者入りして猛烈に医療費を使う2040年ごろが、我が国の社会保障費のピークと予想されます。東京など都市部では、2030年にも高齢化に伴う社会保障負担の上がり幅が最大になると予想され、「2030年問題」とか「2042年問題」などと呼ばれます。

 さすがにこれ以上みなさんの社会保障費を社会保険料として徴収するぞというのは大変であるため、薬価を引き下げたり介護保険のレートを下げたりして、どうにかやりくりして、社会保障費の増大を防ごうというのが昨今の議論の根幹です。

 そこへ、正規品の薬品が特許切れとなり、いわゆるジェネリック(ゾロ)なる安い薬価でモノを流してくれる方向へ切り替えようというのが厚生労働省の考えていたことで、まあここまでは分からんでもない話です。わざわざ高価な正規品を買うよりは、同じ効果のジェネリックに切り替えればほんのりお薬代が安くなり、社会保障費は少しでも抑えられますから。