薬価引き下げによる製造工程の合理化で事故が多発
ところが、中医協という薬価を決める国の組織が中心となり、広い分野で「薬価の引き下げ」を決定しました。もちろん、中には時代が下り効果が乏しいことが判明したり、新しい薬はもっと効果があることが分かったものもあるので、そういう古い薬はとっととやめちまえというのもあるわけです。ただ、概ねにおいて、薬価を引き下げるぞとなると薬を作っている製薬会社からしますと、薬を作って売るという仕事の儲けがダイレクトに減ります。
結果として、製薬会社も製造工程の「合理化」を行うにあたり、製薬検査ラインのワンオペ化とか、検査体制をザルにするなどのコスト削減策に打って出ます。そこまでやっても赤字となる薬剤も出るなどして、まあ大変なことになっておったわけですが、当然のように事故が多発するようになったんですよ。
まず、ジェネリック医薬品大手の小林化工で水虫治療薬に睡眠導入剤の成分が混入して、80代男性が亡くなるなどの事故が発生。
睡眠剤混入で死亡2人に 患者全員に慰謝料30万円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG177MG0X11C20A2000000/
次いで、同じくジェネリック医薬品大手の日医工が不正な医薬品検査を実施していたかどで業務停止命令。
日医工32日間の業務停止命令 後発薬大手10年以上前から違法処理
https://webun.jp/item/7736973
さらに、ニプロファーマ社の福島県の工場が地震で損傷して3か月操業停止に追い込まれるなど、地味に問題多発で医薬品流通に大きな支障が出たことが背景にあります。
この事案の真の問題は「解がない」点にある
一連の混乱を受けて、厚生労働省は医薬品不足をめぐって「お前らが地域内で融通しろ」という見解を発表したため、薬不足の矢面に立たされる薬局や薬剤師からは怒りの声が爆発しとるというのが実情ではないかと思います。
後発品供給不安への対応、「薬局間で融通を」 医薬局・田中総務課長
https://nk.jiho.jp/article/166041
ところが、この事案の真の問題というのは「解がない」点にあります。
強いて言えば、時間が解決するか、時間が解決できないならば製薬会社が患者さんと一緒に潰れるしかないじゃんという話になります。薬価が引き下げられるということは、製薬会社からすれば割に合わないジェネリック医薬品などからの撤収も視野に入る話で、製薬会社もビジネスですから、時間が解決しないタイプの問題はだいたいこの薬価引き下げが理由だと言えます。大変ですね。