車両を往来する乗務員の男性に意味ありげな視線を送るも、いずれもササッと通路を横切るだけで、この日に限ってチケットの確認も行われない。
「充電、多分まだまだかかるから席に戻ったら? 友達も待ってるでしょう」と言っても「仕事したいんだけど、あなたがそこで話していると仕事が進まない」と言っても彼は諦めようとせず、なんとかしてナンパを「成功」まで持っていきたい様子で、表情には彼の執念のようなものが透けて見えていた。
「あの、大阪でも東京でもそうやけど繁華街なんか行ったらめっちゃ肌露出してて髪色も派手な女の子いっぱい歩いているやん、あれ俺、嫌いやねん。香水の匂いかなんか知らんけどそういう子、だいたいめっちゃくさいし。あんたみたいな感じの、地味な服着てるおとなしそうな女の子の方が好きやねん、俺」
目の前で性欲を丸出しにする男性
彼は独身で、私と同じ29歳(当時)だという。未婚で子供もいない、という彼のスマートフォンカバーには可愛らしい3歳くらいの女の子の写真が貼ってあり、「その子は?」と聞くと「友達の子供やけど、自分の子供くらい可愛がってる」と言う。
彼が問題発言をしたのは、車窓から富士山が見え始めるくらいだっただろうか。途中からほとんどスルーして窓の外を眺めていた私に、突然「セックス好き?」と聞き始めたのである。
「セックス好きか? どれくらいの頻度でする? 1人でとかする?」
彼と同じくらい、赤の他人にマシンガンのように質問(性欲)を次々と繰り出せる人間が他にいるだろうか、と思わずあっけに取られてしまった。しかし次の瞬間、これまでのフラストレーションが一気に爆発して、目の前で性欲を丸出しにする男性に対して「もしも日本人の女にそういった性的な話をしても許されると思っているなら勘違いをするな。私はその質問に不快感を覚えるし、少なくとも私に対してそういう話題を二度と口にするな」と、懇々と説教を垂れることになってしまったのだ。