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まさか「地味な女」に怒られるとは思っていなかったのか、「ごめん」と言った男性はしばらくしおらしくしていたが、新幹線が品川駅に近づいたのを察知したのか、最後に「てか、LINEやってる?」と口に出したので、おそらく懲りてないし、また同じことを他の誰かにやっていることと思う。
「相手をキレさせてしまったら」
「日本人の女は『ピカチュウ』と言っておけば抱ける」と発言している男性の画像がネット上で話題になっていたのを思い出して、もう少しキツめに怒っておけば良かったと思う一方で、「女性に恥をかかされた」相手が逆上したときのリスクも頭をよぎってしまう。
おそらくこの記事を読んだ人のなかには、「もっとはっきりナンパを断ればいい」と思う人も多いと思う。でも、考えてみてほしい。新幹線で自分は窓際にいて、逃走経路である通路側は、自分が力では絶対に敵わない相手に遮られている。ここでナイフでも出されて滅多刺しにされれば、命を落とすかもしれない。
乗務員を呼び止めることもできたかもしれないが、駅事務所での話し合いになれば仕事のスケジュールに遅れる可能性もあるし、乗務員の指示で男性に自由席に帰ってもらったとしても、あとで何かしらの危害を加えにくる可能性も否定できない。
直近で起きた電車でのテロ事件や女性を狙った犯罪の報道を見るたび、計画的に、悪意を持った人間に対しては「手の打ちようもなかった」であろう現場の様子を想像してしまう。
ああすればよかった、こうすればよかったと、「結果論」でしか語れない世界線を、これからどう生き延びていけばいいのだろう。