《俺の答えは「扱いが面倒くさいほうが、生きてる気がするから」。人から見ればバカげたことかもしれないけど、生きてる実感て、現代人にすごく必要なものなんじゃないかな。そして、俺はそういう感覚をわかちあえる人とつながっていたい》(※2)
こうして見ていくと、長瀬がジャニーズ事務所を辞めたのも、あえて安定した道を断つことで生きる実感を得たかったからではないかと、つい勘繰ってしまう。
退所後、事実上の引退状態にある長瀬に対し、いくつかの週刊誌が直撃取材を試みている。
『女性セブン』が8月に取材した際には、再びメディアで活動する気持ちはないのかと記者が問うと、彼は《別にそこは(引退と)イコールじゃないと思うから。やろうと思ったら、いくらだってできる。どんな肩書の人だって映画は撮れるし。ただ、俺がやりたいと思っていることは、日本でやっている奴がいないから。説明してもみんなわからない》と答えたという(※3)。
じつは似たようなことを、彼は3年前にも作家の林真理子との対談で話していた。このとき、長瀬さんみたいな人気者が映画の企画を持っていけば、映画会社もちゃんと考えるのではないかと林に言われた彼は、《いやいや、そんなにうまくいかないのがこの社会なんじゃないですかね》と否定した上、《僕は誰もやってないものをやりたくなっちゃうんですよね。だから、企業も見込みのないものに対してお金を出すことになるし、それは間違ってると思うんですよね》と語った(※4)。
退所後、父親に「俺はこれからだ」
長瀬はかねがね、自分のメッセージを言葉にするのではなく、ドラマや歌で表現して、見た人に何かしら感じてもらうことを信条としてきた。現在、沈黙を続けているのも、将来に向けて彼なりに考えがあってのことなのかもしれない。それを裏づけるように、退所後、長瀬の父親が「お疲れ様」と労ったところ、「俺はこれからだ」との言葉が返ってきたという(※5)。
ちなみに先の対談で長瀬は、仮に自ら映画をつくる機会がめぐってきても《誰にも何も言わず勝手につくって、完パケ(すぐ上映できる完全な状態)出して「つくりました!」という形にしたいです。「今つくってます」とか絶対言わないです》と断言していた(※4)。
もし、彼が復帰するとすれば、おそらくそんなふうに意表を突く形になるのではないか。いまはただ、いつかきっとその日が来ると信じて、彼の復活を望む世の多くの人たちとともに待つことにしたい。
※1 『ザテレビジョン』2021年1月22日号
※2 『婦人公論』2007年10月7日号
※3 『女性セブン』2021年9月2日号
※4 『週刊朝日』2018年6月15日号
※5 『週刊文春』2021年5月6日・13日号