1ページ目から読む
3/3ページ目

「夜に犬が鳴くと容疑者が𠮟りつける声が聞こえた」

 アニマル桃太郎で育った犬は県外も含む全国のペットショップで販売されており、繁殖場から近い大手ホームセンターでも扱われていたようだ。近隣の住民からは、繁殖場の様子はどう見えていたのか。繁殖場の近くに住む、百瀬容疑者を幼い頃から知る親戚が証言する。

桃太郎の犬を扱っていた繁殖場近くのホームセンター ©文藝春秋

「夜に犬が鳴くと、耕ちゃん(百瀬容疑者)が𠮟りつける声が聞こえました。従業員は逮捕された有賀氏と、他に女性が3人ぐらいいたかな。嫁も事務所で電話を取ったりと、事務作業を手伝っていましたね。耕ちゃんが繁殖場のペットの糞尿が垂れ流された新聞紙をビニール袋に入れて、当時勤めていた建設会社のトラックで運ぶ姿を見ることもありました。

 夏頃には風が吹くと近隣まで臭いがひどくてね。『血統書付きの犬を売らないといけなくて、変な子犬が産まれるといけないからケージの外には出さない』と言っていました。私自身は繁殖場に立ち入ったことはありませんね」

ADVERTISEMENT

 百瀬容疑者は地元松本市で生まれ育ち、元々は動物好きの優しい少年だったという。

「子供の頃はひよこやモルモットを育てたりする優しい子でした。兄から譲り受けた、ドーベルマンぐらいの大きな犬を飼っていたこともあります。母親からもらったボロ布で、生まれたばかりの動物を拭ったりと可愛がる姿を見ましたよ。大学卒業後は、地元の建設会社で働いていました。誰かをいじめるような人ではないですよ」(前出の親戚)

動物を「まるで商品としてしか扱っていない」

 一方、繁殖場に立ち入った人から見た、百瀬容疑者の印象は180度異なったようだ。

「動物看護の専門学校生の知り合いが、学校の研修で桃太郎を訪れたことがありましたが、百瀬容疑者が動物を『まるで商品としてしか扱っていない』と絶望的な表情を浮かべて帰ってきたのを覚えています。

 桃太郎から犬を買った知人も、人間に怯える性格がいつまでたっても消えないと話していました。幼少期の育てられ方も関係しているのか、業界では『桃太郎の犬は早く死ぬ』という噂を聞いたこともありますね」(前出の関係者)

近隣のペットショップでも桃太郎の犬は扱われていた ©文藝春秋

 コロナ禍で在宅勤務が増え、空前の好景気を迎えたペット市場。

 劣悪な繁殖場で育ったペットたちの“暗い生い立ち”は、本人たちの口から語られることはない。それゆえ、こうした悪質業者が後を絶たないのだ。