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「命懸けの瞬間が好きなんですよ」

――その金銭感覚は、ギャンブルへの情熱とも通じていそうです。

ムツゴロウ ギャンブルは大好きですね。僕は、どうなるかわからない命懸けの瞬間が好きなんですよ。たとえば競馬なら10万円くらいの馬券を買って、胸のポケットに入れてレースを見るんです。その馬が勝って500万円くらいになれば、もうしばらく競馬ができる。それを考えたら、頭がパーっとなるんですよ。

 

――ムツゴロウさんの馬を見る目はすごそうです。

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ムツゴロウ 競馬の話をすると「いくら勝ったんですか?」と聞く人はよくいるけど、そんなことはどうだっていいんですよ。もっと大切なことが競馬にはあるんです。

――どういうことでしょう?

ムツゴロウ 自分が賭けた馬が負けたとするじゃないですか。そうしたら、どうして1着に来なかったかを考えるんです。それを知るために自分で馬を育てて、調教して、自分で乗って草競馬に出る。それで負けたらまた調教をし直す。それを何度もやらなきゃ馬のことはわかりません。第4コーナーを抜けて直線の端に立ったときのね、胸が開いていくような感激と嬉しさはちょっと他のものでは味わえませんよ。

ムツゴロウさんの視線は時に鋭い

「お金があるならいくらでも勝負してやる」

――「見る、賭ける」と「乗る」がつながっているんですね。ギャンブルと言えば、ムツゴロウさんは日本プロ麻雀連盟の最高顧問も務められています。

ムツゴロウ 麻雀は兄貴の影響で高校2年生から始めました。30代の頃は麻雀に明け暮れていましたね。もう50年前だから時効だと思いますけど、大晦日と正月をまたいで10日間連続で打ち続けたこともありました。

――それはすさまじいです。当時はもう結婚されていましたよね?

ムツゴロウ 12月28日に雀荘に入って、寝ないで打ち続けていたら財布がどんどん厚くなっていってね。でも負けはじめると今度は薄くなっていく。そういう増減がおもしろかったんですよ。「お金があるならいくらでも勝負してやる」なんて言いながら打ち続けて、結局1月7日に11日ぶりに家に帰ったのかな。家のドアを開けたら女房に「テメー何してるんだよ!」って怒鳴られましたよ(笑)。僕は「すみません、すみません」って謝りっぱなしでした。

 

――「雀聖」と呼ばれる阿佐田哲也氏との勝負も伝説になっています。

ムツゴロウ 阿佐田哲也さんは人の悪口を絶対に言わない人でね、一緒に打つのは楽しかったですよ。40代くらいの頃は北海道から東京へ出てくる時にホテルオークラを定宿にしていたんですが、ホテルに到着するといつも阿佐田さんから「今晩どうですか」って電話が来るんです。「今、東京に着いたばかりですよ」と言っても、「いいじゃないですか。今晩やりましょう」って。

――阿佐田氏との勝負はどうだったんですか。

ムツゴロウ 僕が阿佐田さんに負けたという記録はどこかに残っていますか? ないでしょう。このムツゴロウが徹マンで誰かに負けたという記録を持っている人がいたら見せてもらいたいものですね(笑)。動物の原理に比べれば、麻雀の原理なんて大したことありません。僕は会社の給料袋だって、封を切らずにそのまま女房に渡してたんですよ。自分のお金はギャンブルで稼ぐって決めてましたから。