「これほどブルーな大統領選はない」
こうして候補者が出揃い、いよいよ本格的な盛り上がりを見せるかと思いきや、まだそんな気配は見られない。これほどブルーな大統領選はないといわれるほど「投票したい候補者がいない」という声が多いのだ。
特に両候補者は20~30代には圧倒的に不人気だ。李候補については「狡猾にみえる」「何をするか分からない恐ろしさを感じる」という評が、尹候補については「古い価値観」「ジェンダーに鈍感」という声が多く、李候補よりも好感度は低い。
また、共にいつ爆発するか分からない火種を抱えてもいる。
李候補は、最近、城南市長時代に行われた開発事業で便宜を図ったのではないかという不正疑惑、通称「テジャンドン疑惑」が浮上し、連日メディアを騒がせており、捜査の行方いかんで大統領選史上初の途中辞退となるかもしれない状況だ。
尹候補も検事総長時代に与党議員を起訴させるため不正な細工をしたのではないかという疑惑などが持ち上がっており、こちらも捜査が進んでいる。さらに実業家の夫人には株の不正取引疑惑が浮上しており、義母は高齢者施設を違法に開設し、資金を横領した罪状などで逮捕され、一審では懲役3年の判決が出て、控訴している。
日本と何か摩擦が起きれば…
韓国では与・野党共に3・5割ほどの岩盤支持層を持ち、中道層は3割といわれるが、2020年4月の総選挙では与党を圧勝させておきながら、今年4月の補欠選挙では野党を圧勝させた流動性の高い中道層がどんな選択をするのかに注目が集まっている。
11月10日、世論調査会社「韓国ギャラップ」がメディアの依頼で行った調査では、尹候補「41.7%」、李候補「32.4%」という結果が出た。他の調査でも今のところ尹候補が優勢だが、韓国の選挙は最後まで何が起こるか分からない。この調査でも、20~30代で「支持する候補者無し」という回答が合わせて36.8%もおり、両候補者共にこの世代の取り込みに躍起になっている。
別の中道系紙記者はこんなことを言っていた。
「90年代後半までは北朝鮮の脅威を煽ると保守が勝利するというような“北風”効果が言われたこともありましたが、今回の選挙では、日本と何か摩擦が起きれば、対日強硬派の李候補者にとっては追い風になるかもしれません」