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工場を転々とし、プレスで左手首を負傷した青年期

 工場を転々とし、野球のグローブ製造工場で働いていた時にプレスで左手首を負傷し、今も曲がったままだ。中学・高校には進学できず、後に検定試験で中・高の卒業資格を得て、奨学金で中央大学法学部に入学。バケツが机代わりだった。

 卒業と同時に司法試験に合格。検事の道も開かれたが、「独裁者(当時の全斗煥元大統領時代)の下では働けない」と地元の城南市で人権派弁護士としてスタートを切った。これは盧武鉉元大統領の弁護士時代の講演に感銘を受けてのことだったという。

 市民運動に参加しながら、盧元大統領時代の2006年、当時の与党「開かれたウリ党」に入党。城南市長選挙や同市議会選挙での落選を繰り返した後、2010年に城南市長選挙で当選を果たし、政界デビューした。市長を2期務めた後、2018年には京畿道知事に当選。大統領選候補者になる直前まで知事職に就いていた。京畿道は韓国全人口の約4分の1に当たる人口約1000万人あまりを有する。

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 李候補は政策通としても高く評価されており、尹候補を「政治のアマチュア」と皮肉っている。「共に民主党」内では「非主流・非文在寅」といわる。そのため、与党では李候補が大統領になれば、有権者が現政権を審判したと判断したことになり、実質的に「政権交代を意味する」とされている。11月10日、ある討論会に参加した李候補はこんなことを言っている。

「李在明政府は(文在寅政府と)根っこは同じであることは事実であり基本的なことは共有しているが、以前とはまったく違った、さらに有能でさらに前進する政府になる」(東亜日報、11月11日)。

米国と足並みを揃えた対北政策を指向

 では、新しい大統領の下で日韓関係はどう動くのか。

 肝心の対日政策は具体的なものはまだ見えてこない。ふたりとも歴史・領土問題などについては韓国側の立場から対処するとし、一方で未来志向的な関係をも作っていく、と抽象的だ。

 外交ブレーンとして、尹候補には、ソウル大学国際大学院のパク・チョルヒ教授が、李候補にはソウル大学日本研究所のナム・キジョン教授がそれぞれ入っているが、ふたりとも知日派として知られた人物だ。ただ、李候補は対日強硬派として日本へは過激な発言も多く、また、「文大統領の被害者第一主義を継承するだろう」(前出記者)と見られている。

 対北政策では李候補は文政権同様、北朝鮮で非核化が行われるという条件の下での制裁緩和や経済特区の設置などをあげ、尹候補は軍事境界線に米韓+北朝鮮の連絡事務所を設置し、非核化の進展により経済支援などを行っていくとしており、米国と足並みを揃えた対北政策を指向していることが窺われる。