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住宅ローン破綻はこれからが本番

 一見するとコロナ禍による非常事態であるために生じた騒動のように感じる問題であるが、実は日本社会では、住宅ローン破綻はこれからが本番である。ローン返済額が年収の35%はもちろんのこと、25%であっても住宅ローンを返済していくには、「想定外」の出来事が頻発する恐れが高いからだ。

 アベノミクスでは異次元の金融緩和を行うことで、市場に大量のマネーを供給し、株式や不動産価格が上昇した。また低金利政策は、通貨安をもたらし、円の対ドル相場は円安が進行、現在で113円から114円台を推移している。

 これまで輸出型産業で発展してきた日本は、円安を歓迎して円高を警戒する癖がついているようだが、自国通貨が安くなることを喜ぶ国は少ない。通貨が安いということは国際市場においての購買力が落ちるからだ。「安いニッポン」を喜ぶのは日本にやってくる外国人観光客であり、日本の不動産を買い漁る外国人マネーだ。

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電気代、ガス代も上がる要因となる「円安」

 日本は今や世界市場の中で勝ち残っている製造業は少なく、むしろ原材料の輸入価格は上がり、自給率37%(カロリーベース)で、多くを輸入に頼る食料品の小売価格は近年次々に値上げが発表されている。輸入食料品というとチーズだとかバターなどの乳製品やオレンジなどの果物が良く話題になるが、今や国際市場ではマグロなどの高級魚も買い付けられていて、日本勢は中国などに買い負けているのが実態だ。

 日本人の生活をベースに円安をみれば、食料品の値上がりだけでなく、電気代、ガス代が上がる要因になる。水道はすでに既存施設の老朽化のために水道代の値上げが相次ぐ。原油価格の上昇は、車なしでは生活できない地方の人々の財布を痛めつけている。社会インフラコストの値上げは、鉄道や航空といった交通費の上昇を促す。

 日本ではまだあまり注視されていないが、気候変動、地球温暖化の状況は、食糧生産に大きな影響を与えつつあり、高くなった食糧を世界市場で中国など他国に「買い負ける」日本の姿が浮き彫りになっている。2050年カーボンニュートラルは間違いなく生活インフラである電気、ガスの価格を引き上げることになる。