ある意味正しいけどざっくりし過ぎているものもあれば、そもそも全くでたらめなものもある。ここまで来て初めて、自分のやっていることが単なる大喜利の亜種であったことに気付く。「これは面白い。クラスの人気者になれる」と考え、「何か言葉を言ってくれればすぐにそれが答えのクイズを作る」という特技を持つキャラとして名を売ろうとしたが、誰も興味を示してくれなかったうえに(興味を持ってくれるような人は最初から一緒にクイズゲームで遊んでくれていると思う)、今となっては三拍子の漫才とやっていることが同じなのでもうお蔵入りさせざるをえない。
しかし、「答えだけクイズ」というコンセプト自体は無駄にはならなかった。「同じお題でそれぞれクイズを作る」というルールにするといいパーティーゲームになったからだ。「正解は、鉄腕アトム」というお題が出れば、それぞれ全く違う視点から問題文を作ろうとする。それが面白い。
問題 英語圏では「アストロボーイ」という名称になっている、手塚治虫原作のアニメは?
問題 作詞を詩人の谷川俊太郎が担当し、JR山手線高田馬場駅の発車メロディとして主題歌が使われている手塚治虫原作のアニメは?
問題 アニメキャラクターとして初めて、埼玉県新座市の特別住民として登録されたキャラクターは?
これくらいのバリエーションはすぐに生まれる。でもやはり「答えだけクイズ」で一番面白くなるのは、答えが名詞になっているものではなくて、文章になっているものだ。要するに、問題文の事実としての正確性を問われないものほど、何をしてもやりたい放題になるので楽しい。たとえば「実は地球にいたから」というのを「正解」として設定する。例題は「なぜ彼は自由の女神を見て愕然としたのか?」。さて、みなさん、改めて。答えは「実は地球にいたから」。果たしてどういうクイズだった?
問題 ガガーリンが「地球は黄色かった」という言葉を残したのはなぜ?
「地球」つながりで宇宙飛行士のガガーリンに連想を飛ばした例。たぶん地球と思い込んで見ていたのは月だったんだと思う。
問題 私はこれまでに何度も何度もぐるぐると回転していますが、決して目が回りません。なぜでしょう?
実は「回転」の正体は地球の自転だったという落ち。これはなぞなぞのレベルになっていますね。
問題 松岡修造はなぜ、今まで一度も宇宙人と呼ばれたことがないのでしょうか?
答えに窮した末に、こんな支離滅裂な問題文が出てくるのも全く問題なし。場によってはむしろそういうもののほうが受ける。別に松岡修造じゃなくても誰でもよくないかこれ。武井壮でもいいだろ。
それではここでちょっと、「答えだけクイズ」として構成されている現代短歌があることを紹介してみたい。
ア 蜂が鯨を刺すから イ 僕は人麻呂だから ウ 睡いから
吉川宏志『青蝉』
答えがこんな選択肢になるなんていったいどんな問題なんだ? たぶん正解は「ウ」なのではないかという予感がひしひしと伝わってくるが、この選択肢に対して問題文を考えてみることが、この短歌の正しい「読み方」なのではないかと思う。教材制作に携わっていた経験のある作者ならではの、テスト問題のパロディである。