なぞなぞの分類その1 ダジャレ型

 先述の「パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?」とか、「りっぱりっぱと言われるのに人に踏みつけられるものなーんだ?」などがこのタイプ。前者の答えはフライパン、後者はスリッパである。スリッパという答えが先に決まっていて、言葉の分解をしてみた結果「りっぱ(立派)」が隠れていると気付いてそこを取り出してみたというかたちだ。ダブルミーニングを利用しているわけだから、ようはダジャレである。ある言葉の中に隠れている別の言葉を取り出せば問題になるわけだから、作るのは比較的容易だ。その分ちょっとこなれない、幼稚なテクニックともいえる。しかしダジャレを原型にして作れるわけだから、いつもダジャレばかり言って部下にうざがられているダジャレおじさんなどにはうってつけだ。いつもダジャレばかり言ってくるダジャレおじさんから、いつもなぞなぞを出題してくるなぞなぞおじさんへとジョブチェンジできる。余計にうざがられるような気もしないではないが。

 フライパンとかスリッパは語尾にある言葉を切り取っているわけだけれど、必ずしもそういうタイプばかりとは限らない。たとえば「ミズーリ州」という言葉を答えにすると決めたとき、「みずうりしゅう」という文字列を分解してみると「水売り州」にも出来ることに気付く。言葉の切れ目の位置をずらす、いわゆる「ぎなた読み」というやつである。なのでこういうなぞなぞが作れる。

問題 アメリカの州の中で、ミネラルウォーターの輸出額が高いのはどこでしょうか?
答え ミズーリ州(水売り州)

 ポイントは「水」「売る」という言葉を直接使わず、「ミネラルウォーター」「輸出額」と微妙に言い換えていること。この言い換えの技術次第で、ただのダジャレから頭の柔らかさを求めるハイレベルなものになる。なぞなぞ作者の腕の見せどころだ。試されるのはボキャブラリーの豊富さ。

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問題 五十音の文字でマラソン大会が開かれました。しかし直前に負った怪我が完治していなかったため最下位になってしまった文字がいました。どの文字だったでしょう?
答え り(リハビリ=りはビリ)

「ミズーリ州」よりもう少しレベルを上げた問題。「リハビリ」を答えにすると決めて、その中に隠れている「ビリ」に着目する。これが「ビリはビリでも病院にあるビリはなーんだ?」だったらレベル1のダジャレである。「リハビリ」という言葉そのものは隠して、「怪我が完治していなかった」なんてふうに微妙に言い換えるのである。気付くかどうかすれすれを狙う巧妙な言い換えラインは見極めがなかなか難しい。「怪我したばかりだったため」とか「怪我の治療中だったため」とかいろいろ候補を出してみて、最適な言葉を選んだ。わずかなニュアンスの違いによっては「リハビリ」という言葉を連想できない恐れがあるので難しい。そして「ビリ」もちゃんと「最下位」に言い換えてある。ここをそのまま「ビリ」という言葉にしてしまったら台無しだ。

 これくらいになるとかなりなぞなぞらしくなったと思うが、構造としてはあくまでダジャレ型であり、「食べられないパンはなーんだ?」と一緒である。「食べられないパンはなーんだ?」だって、言い換えテクニックを駆使するだけでちょっとした難問に進化させる余地も、ないことはないのだ。類語辞典はなぞなぞ作りの必須アイテムといえる。

 なおパソコンの誤変換は、このダジャレ型なぞなぞの卵の宝庫である。誤変換には「ぎなた読み」で発生したものが多いからだ。「お礼状」と打とうとして「俺以上」になってしまうようなパターン。これに細かいシチュエーションを付け加えて問題文っぽくすれば、ダジャレ型なぞなぞの完成である。

問題 ワールド男らしさコンテストでとても敵わなかったあの人に贈る手紙とはどんなもの?
答え お礼状(俺以上)

「みんなでなぞなぞを作ってみよう」的なワークショップをするときは、参考資料として誤変換を集めた本などを使うといいかもしれない。