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なぞなぞの分類その3 文字いじり型

 文字を記号として認識し、パーツごとにばらばらにすることでなぞなぞを作るというもの。「属性」の話でいえば、「文字のかたち」という属性を最高ランクに持ってきたパターンだ。文字のかたちを最重要視する機会というのはいくら特殊な状況(記憶喪失になって初めから日本語を覚え直しているとか)を想定してみても、まずありえない。言葉遊びをするときくらいしか最重要視されない要素だ。

 漢字を覚えるために、漢字をパーツにばらしてなぞなぞにするというのは大昔から取り入れられてきた。「山の下を風が吹く。それが嵐」といったタイプのもの。「人の為と書いて偽」とか「信者という言葉をぎゅっと縮めると儲」なんてのも、このパターンだ。99歳のお祝いを「白寿」と呼ぶが、これも「百」という漢字から「一」を引いたら「白」だからという理屈。こういうのもなぞなぞに出来る。

問題 真っ赤な服を着るのは60歳、では白い服を着るのは何歳?
答え 99歳(百から一を引いたら白だから)

 「死んだとき」と答える奴が絶対出て来そうなのがちょっと問題点だが……。

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 文字いじり型は「暗号なぞなぞ」の定番だ。わけのわからない文字列にヒントとして「たぬき」の絵が付いていて、「た」を「抜き」にして読んだら文章が成立するとか、そういうパターンが暗号なぞなぞ。「映画館の真ん中にいる虫は?」という問題だったら、答えは「蛾」。「えいがかん」の真ん中の文字は「が」だから。

問題 眼鏡をかけたら家族の一人に見えてくるお菓子は何?
答え 飴

 眼鏡、つまり「め」が「ね」ということであり、「あめ」のメをネに変えたら「姉」である。「リハビリ」もそうだったが、私はどうも助詞になりうる一字に着目してしまう癖があるようだ。「めがね」という言葉を見た瞬間に「メがネ」と解釈してしまう。そこから「メの字をネに変えても日本語として成立する言葉」を延々と探すのである。具体的には、アメ、イメ、ウメ……とひたすら挙げていき、その都度アネ、イネ、ウネ……という言葉も並走させている。結局ろくなものが見つからず、「飴と姉」に落ち着いたわけだけれど。それでは「メがネ」と同じ発想で、次の問題を考えてみよう。

問題 この国はあなたの力により支配下となりました。これからこの国のある樹木が一本残らず丸太舟に変わります。さて、その樹木とは何?
答え シダ(羊歯)

 お察しの通り。支配下、すなわち「シはイカ」となったので、「シダ(羊歯)」の木はすべて「イカダ(筏)」になったというわけである。なおこの二つの問題の場合、「眼鏡」「支配下」が当初答えにしようと思って用意していた単語であった。いつもなら答えから逆算して問題文を考えるのだけれど、「文字いじり型」の場合、作っている途中で当初の答えは潜伏していってヒントの役割へと移行するのである。さて、それでは次の問題。

問題 釣りを趣味とするサラリーマンが職場の机の中に自分の釣った魚を入れておいたところ、次の釣りにて不幸にも足を滑らせて水死してしまいました。今彼の机には、ちょっと怖いものが置いてあるそうです。彼が机に入れていた魚とは何?
答え 鱒(マス)。デスク(机)の中にマスを入れ込むと「デスマスク」になるから。

「デス(マス)ク」というふうにヒントが答えを挟み込む形式になっている例。デスクという言葉を直接出さずあえて机と言い換え続けているけれど、職場設定にしたことでデスクという言葉が出て来やすいように工夫してみた。なぞなぞを作る上では、いたずらに難問化させないような配慮も大事である。

 回文もそうだけど、受け手として楽しむばかりじゃなくて、自分でも作ってみることで言葉の世界へさらに深く潜ってゆけるようになるし、もう一度受け手に回ったときの驚きもより一層深いものになる。私は手品はできないけれど、なぞなぞ作りを少しばかりかじってみたおかげで、言葉のイリュージョンに対して子どもの頃よりもずっと素直に驚き、感動できるようになった気がする。

 でも一問のなぞなぞを考えるのにかかる時間は余裕で丸一日以上だったりするので、その場でいきなりなぞなぞを作るよう要求したりはしないでください。すぐにはできません。本当に。