快食・快便は健康のバロメーターだが、自分で排便をコントロールできなくなる病気がある。それが「便失禁」だ。医学的には「無意識または自分の意思に反して肛門から便がもれる状態」だと定義されている。

 便失禁に悩む人は全国に500万人はいるといわれ、決して珍しい病気ではない。しかしながら、恥ずかしさから人知れず悩み、外出を控えるなど、日常生活に支障を来す人も多い。

便失禁を改善する「7つの方法」とは?©iStock.com

医師に取り合ってもらえず…

 50代前半から便失禁に悩んできたという原田貴美子さん(仮名・63歳)は「近所にある大腸肛門科を受診したのですが、まったく取り合ってもらえず、別のところも受診。けれども、しかたがないね、といわれて終わりました」と話す。

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 それでも諦めきれなかった原田さんはネットで病院を検索し、ようやく便失禁を専門に治療している医師に巡り会うことができた。

「そのとき、いろいろ検査をしたのですが、原因ははっきりしませんでした。とりあえず、便の固さを整える薬と下痢止めを処方されましたが症状が改善せず、保険適用になったばかりの仙骨神経刺激療法という手術を受けました。これはお尻にペースメーカーを植え込んで、仙骨神経に電気刺激を与えるというもので、失禁の回数は格段に少なくなりました」

 原田さんが病院を受診したのは約7年前のことだが、専門医はいまでも増えているとはいえない。そんな状況を受け、地方だけでなく、遠くは海外からも患者が訪れるという亀田京橋クリニック・直腸肛門外来の高橋知子先生に便失禁の原因と治療法についてお話を伺った。

原因は老化だけじゃない…便失禁に悩む人の特徴とは?

 便失禁の原因として、もっとも多いのは「老化による肛門括約筋の衰え」だ。女性だと閉経後、男性だと70歳前後から増えてくるという。排便を調節している肛門括約筋と骨盤底筋は、手足の筋肉に比べてとても小さく筋肉が薄いため、老化の影響を受けやすいのだという。

 老化に次いで多いのが、「肛門括約筋が傷ついて起こる便失禁」である。女性の場合は、時に分娩で肛門括約筋まで切れることが原因となりうる。また、男性でも肛門の手術を受けた後に症状が現れることがある。

 直腸がんの手術では、直腸という便をためておく場所がなくなるため、便がストレートに出てしまい、もれやすくなることもある。がんの場所が肛門近くにある場合には、肛門を残すために肛門の筋肉の一部を切除することがあり、便がもれやすくなるという。