文春オンライン

2021/11/29

 食事療法以外だと4つの改善法がある。

(4)お腹に力を入れるのをやめ、正しい姿勢を心がける

 便がもれやすい人は、肛門のまわりの筋肉が弱くなっている。そういう人がお腹に力を入れるともれてしまう。勢いよく立ったり座ったりする動作はお腹に力が入るので、避けたほうがいい。また、ベッドから起き上がるときもガバッと起きるのではなく、横向きになって静かに起きるようにするなど、普段の動作を見直すことが大切である。

 姿勢をまっすぐ保つのに必要な筋肉は、骨盤底筋、腹横筋、多裂筋、横隔膜である。正しい姿勢をするだけで、これらの筋肉を鍛えることができ、便失禁予防になる。椅子に座る場合も、腹部がまっすぐになるように姿勢を正すことがポイントだ。

 もし運動をするなら水泳がオススメ。浮力があるため、お腹に圧力が加わりにくい。

©iStock.com

 また、ジョギングは地面に足が着いたときに、体重の何倍もの重力が骨盤底筋にかかってしまい、もれやすくなる。お腹を折り曲げないように走れば、もれにくくなるが、ジョギングでもれてしまうという人はフォームを見直したり、足腰の筋肉を強化してから始めるといいだろう。

(5)トイレではいきまないこと

 トイレではいきまないことが大切だ。いきむと肛門括約筋や骨盤底筋に負荷がかかってしまい、かえって便失禁を引き起こしてしまう。便の出にくい人は、足台を置いて手を斜め上にあげ、腹部を伸ばすようにして息をハーッと吐くと便が出やすくなる。

 足台を使うのは、お尻の穴の位置よりヒザを高くするためだという。そうすると、直腸と肛門の角度が鈍角になるので、いきまなくても自然と便が出るようになる。

(6)薬物療法を試してみる

 食事療法で便失禁が改善されないときは、薬物療法を行う。便の中の水分を吸収して軟らかい便を適度な固さに整える薬や下痢止めなどを処方する。

 外出時やスポーツ時に便失禁を防ぎたいという人には、ペリスティーンアナルプラグという装具を肛門内に挿入する方法もある。これはタンポンのようなもので、肛門にふたをすることで便もれを防ぐ。

 それ以外に、冒頭で紹介した原田さんが受けた仙骨神経刺激療法という手術を行うこともある。これは心臓のペースメーカーと同じ形の装置を臀部に埋め込み、リード線を介して排便にかかわる仙骨神経に微弱な電気刺激を与えて便失禁を改善するというもの。電流の強さを医師が調節するが、患者自身がリモコンで変えることもできる。ただし、これは最後の最後に行う治療法で、亀田京橋クリニックでは年に1回あるかどうかという頻度だという。

(7)肛門外科あるいは消化器外科を受診する

 日本では便失禁の診断・治療に関する歴史が浅く、1990年代後半から専門に扱う病院が出てきたという状況にある。そのため、いまだに便失禁の治療に当たる医師や医療機関は少ない。

 しかし、2017年に日本大腸肛門病学会が「便失禁診療ガイドライン」を刊行したことをきっかけに「便もれは治療できる病気」だという認識が医師の間でも広がりつつある。今後は便失禁を扱う専門医や医療機関も増えていくことだろう。

 便失禁で医療機関を受診する際、最寄りに病院が見あたらない場合には、大腸肛門機能障害研究会のホームページに全国の専門病院リストが掲載されているので、参考にしてほしい。

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