過激な暴力シーンで心の距離が縮まったのでは
そんな泰良と裕也が強奪した車にたまたま乗り合わせていたという不運で、拉致されてしまうのが小松さん演じるキャバ嬢・那奈。
役の二人が恋に落ちるような展開を期待していた方もいたでしょう。そんな期待もむなしく、恋愛に発展しないどころか、仲間意識が芽生えたり共闘したりすることもありません。
それどころか、裕也が何度も何度も那奈をひっぱたき、胸を揉み、スカートに手を入れ……といった展開も。
けれど那奈も那奈で、ありがちな清廉性のあるヒロインではなく、利己と保身が行動原理のようなタイプ。そのため最終的には那奈は裕也を殺害するのです。
那奈が故意に起こした自動車事故で裕也は瀕死のダメージを負い、最後は那奈が「キモいんだよ、死ね!」と蹴って蹴って蹴って蹴って蹴り殺す。後日、病院で警察から事情聴取された際は、自分が殺害したことを隠しつつ、いけしゃあしゃあと「死んだ子(裕也)のほうは、まぁかわいそうやなって」と涙を流す。たいしたタマです。
さんざんな目に遭わせ合う初共演作でしたが、撮影を考えれば、過激なバイオレンスシーンほど役者同士の信頼関係や意思疎通が重要になってくるものでしょう。それだけ二人の心の距離は縮まったのではないでしょうか。
また、映画のレビューサイトなどでは、“胸糞悪い映画”と評されることもある『ディストラクション・ベイビーズ』ですから、菅田さんと小松さんはこの映画で“共犯者”のような気持ちも共有していたのかもしれません。
『溺れるナイフ』/全能感に満ちた若いカップル
菅田さんと小松さんがダブル主演した恋愛映画が『溺れるナイフ』(2016年)です。
前半は、思春期特有の全能感に満ちたカップルのイチャつきが続きますが、中盤に起こったある事件をきっかけに作品の方向性がガラリと変貌します。
東京で人気モデルとして活躍していたものの、親の都合で田舎町に引っ越してきた中学3年生の夏芽(小松)。さびれた町にうんざりしていた夏芽でしたが、金髪で透明感のある俺様系美少年・コウ(菅田)とクラスメイトになり、灰色の日々が一気に彩られていくのでした。