通院した病院では「急性ストレス障害」とされ、その後は「適応障害」と診断された。
この日の夕食後、母親が担任に電話。「髪を切ったそうで」と告げると、「ああ、ハイハイ」と笑いながら返してきた。母親は「良かれと思ってのこととは理解できますが、やる前に親に一報を入れて欲しかった」と伝えた。そして、「本人は、明日、学校へ行きたくないと言っています」と言うと、担任は驚いた様子で謝罪をしたという。髪を切った学年主任から電話もあり、「いやー。お母さん、すみませんでした」などと謝ったものの、切る前の髪型が支障のあるものだったとの説明をした。
いじめを黙認され不登校に
そもそも、なぜ体臭の指導が髪の毛を切るという話になるのかが不思議である。
「娘は、日本人である私と、外国人の夫の間に産まれたハーフです。たしかに、容姿などで日本人同士の夫婦間に産まれた子と比べ、ヨーロッパ的なところがあるかもしれない。しかし、特段、体臭に問題があるわけではない。仮に違いがあっても、からかいの対象になるものではない。中学の対応は、むしろ、いじめの要因が娘にあるといわんばかりではないでしょうか」(母親)
ちなみに、女子生徒には発達障害がある。診断書によれば、「特定不能の広汎性発達障害」となっている。
子どもの頃から、表情の意図が分かりづらく、言葉はそのまま捉えてしまう特性があるため、1対複数であると、誤解しやすく、一斉の指示のときには注意が必要と言われている。感覚過敏のために、美容室を利用したことがなく、母親が髪を切っていた。
女子生徒は、筆者の取材に「中1までは部活が楽しかった」と振り返った。
父親は「いじめはすぐわかった。苦しそうな表情で、気が重い感じだった。“学校へ行きたくない”と顔が言っていて、それまでと、180度違っていた。その後もいじめが続いた。そして、最終的に、学校へ行かなくなったんです」と話す。
「くさい」と言われるいじめの訴えを受けた学校の対応は、いじめを黙認する一方で、いじめられたと主張する側の女子生徒の髪の毛を切ることだった。その結果、女子生徒は精神的苦痛を受け、不眠や食欲不振、不登校になったのだ。