「TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)を幼い頃からしているので、仮面は増やそうと思えば、いくらでも増やせます。その気になればいくらでも装うことができます。仮面のことについて話をするのは、親とカウンセラーぐらいですね」(同前)
また、急性ストレス障害になったものの、女子生徒は「死にたい」とまでは思わなかった。
「(自分のアバターである、リンゴのキャラクター)『バグの』が殺されたという感覚はありましたが、死にたい感情はなかったなあ。その頃、ネットの掲示板を利用していたのですが、自分よりも病んでいる人もいました。みんな病んでいるな、と思って、(アクセスを)やめました」(同前)
文科省に問合せするまで学校は調査もしなかった
この髪の毛を切った件に関しては、「学校事故」としての調査が行われた。これは、母親が翌年6月に、文部科学省に電話で問い合わせをしてから始まった。この案件が「学校事故」にあたるのかは学校も市教委もわからないでいた。また、日本スポーツ振興センターの災害共済給付が精神的被害にも適用されるという説明もなかった。最終的には、災害給付金は支払われた。
「精神的被害も災害給付の対象になると教えてくれたのは弁護士でした。学校では、養護教諭さえ、給付対象になることを知りませんでした。保険の『ほ』の字も言いませんでした。学校や市教委では『災害給付として認められたら、学校事故』にすると言っていました。学校事故と災害給付は別のはず。学校事故として認められるまでも大変でした。文科省に問い合わせをしなければ、調査も始まらなかった」(母親)
なお、学校対応をめぐっての市を相手にした裁判のほか、いじめの加害生徒を相手にした民事訴訟もしてきたが敗訴に終わった。判決によると、美術の授業で、4人一組になって、正面の人の似顔絵を描く指示があった。その際、生徒Aは、女子生徒がスケッチブックに描いたAの似顔絵を見て、「キモい」と言い、消しゴムで消した。また、Aは女子生徒の体臭のことで両親に相談。マスクをする対策などをした。その後、Aが所属するテニス部でも、女子生徒の体臭のことは話題になっていく。
女子生徒が不登校になった後に設置されたいじめ問題調査委員会は、「本人にとっては」いじめと認定。それが不登校の原因とも判断した。しかし、判決では、いじめ防止対策推進法上の「いじめ」は認めたものの、「社会通念上許される限度を超えるものではない」として、生徒Aらの民事責任を認めなかった。また、女子生徒への体臭についての話は、最初に両親に相談をしていることから、悪意を持ったものとは言えない、とした。
女子生徒側は地裁判決に不服ではあるが、控訴はしていないという。