ネットと違う実態「(役所の)言うこと聞いてたのに」
——飲食店としての体裁を整えたってこと? 飛田みたいに。
「飛田は特別やねん。税金とかもきっちり払ってやるし」
——そうかな?
「そやで。組合がしっかりしてるから。飛田はちょっとは西成のためになってる、いうか、支えてるとこあるから。ここは、そういう知恵がなかったんちゃう? 組合に。私が思うに、1年に1回くらい寄付するとか、市長の後援会に入っとくとか、してなかったんがあかんかったんちゃう?」
——なるほど。このタイミングで警告が出たのは、休業要請に従わなかったからと、ネットニュースに出てたけど、そうなん?
「何言うてるの。休業要請の期間は36軒全店閉めてたし、時短営業の期間も時間もきっちり守って、この2年近く(役所の)言うこと粛々と聞いてたのに」
——ネットに出てる情報と違うね。
「コロナは関係ないの。余力のないママさん多かった。この2年間ほとんど仕事してなかったんやもん。『持ち店』やったらええけど、その間も家賃発生するし……」
そうか、そういうことだったのか。かんなみ新地の店は「飲食店」として登録されているが、業態が業態だけに経営者たちは飲食店へのコロナの感染拡大防止協力金等を申請できかった。今回の「警告」は、経営者たちが経済的に疲弊し、再び開くハードルが高くなるタイミングを狙ったのだと私は思った。
ただし、摘発ではなく「警告」の形だったのは、行政側の温情なのか、長く看過してきたことの取り繕いなのか、微妙だとも。
経営者も従業員も「全員が女性」の異質な色街
——そりゃあ、キツいよね。
「でも、(警告が出る)予感はあってん」
——どんな予感?
「あまりにも派手になってたから。ほんまは女の子も暗黙の了解いうのを守らなあかんやん、風俗街では。飲食店をやってます、いうテイをはみ出すと、警察にしても市にしても『風俗街でしょう』と、言わざるを得なくなるやん。それを昔の『100人体制』とか知らん新しいママさんたちが、勘違いして」
——風俗として堂々と営業して大丈夫と勘違い?
「そうですそうです。認められてる、と思ってたんちゃうかな。(警察、市とは)探り合いながらやらなあかんかったのに」
——バランスというかトレードというか大人の駆け引きというか……。
「そう。公然の秘密であっても、やっぱりちょっと体裁とらなあかんとこあるやん」
——それを真っ正面からやってしもてたってことなんや。経営者はママさんが多いって聞いたけど。
「全部、女ですよ」
え? 経営者全員が女性って。私は驚きを隠せなかった。飛田の経営者は圧倒的に男が多かったし、ほかの風俗街だって同じだろう。飛田では、新地全体のルールを決める「料理組合」の役員たちも歴代男だ。女という「商品」を使って稼ぐのが買売春街と相場が決まっていると思っていたが、ここでは真っ向から覆されたのだった。