「兵役免除大会」と揶揄…過去には炎上も
しかし、BTSを巡る「芸術要員」の改正は結局、保留された。国防部は「公正さ」の点から反対の立場をとっており、国防委員会でも意見は真っ二つに分かれたと韓国紙記者は言う。
「そもそも、来年、大統領選挙が行われる今の時期に話し合うこと自体、はなから結果が出ていたようなものです。兵役問題は20代の男性にとっては深刻で重要ですから、彼らの票を大きく動かすことになる問題には今触れられるはずがない」
世論の流れをうまく掴んで発言するといわれる与党「共に民主党」の大統領選挙候補者、李在明氏はさっそくこうコメントしている。
「公平さの観点からいえば延長を可能にすることは望ましいが(兵役)免除はできる限り自制したほうがいいと思う。国際的に大韓民国を広めている有能で才能溢れる人材だが、本人たちもファンも軍隊にいくべきだと言っている。政界がわざわざ乗り出して免除してあげようというのはややオーバー」(放送記者クラブ討論会、12月2日)
BTSの兵役について韓国社会で取り沙汰され始めたのは2018年だ。この年の夏に開かれた「ジャカルタ・パレンバンアジア競技大会」で金メダルを獲得したサッカーと野球選手30人近くが兵役免除となったが、大会前から「兵役免除大会」とも揶揄された。特に野球は、各国がアマチュア選手を中心にチームを編成したことに対し、韓国チームは選手の兵役免除を狙ってプロ選手を多数起用したのではないかという疑惑が持ち上がり世論が沸騰した。
そんな世論が冷めやらない中、米ビルボードチャート200で1位を2回獲得したBTSへも「兵役特例」を設けるべきだという意見が野党議員から出され、立法化について話が及ぶと本人たちをよそに大騒ぎとなった。
音楽関係者は「BTSにしか適応されないんでしょ」と…
昨年『Dynamite』が米ビルボード100で1位になると、「(BTSを)兵役免除の対象にすべきだ」とする意見が今度は与党議員から上がり、BTSの兵役を巡る世論が再燃した。結局、昨年末、大衆文化において貢献がある者の入隊が延長できる年齢を、満28歳から満30歳まで引き上げられる法改正が行われ、BTSの最年長メンバーは30歳を迎える22年12月31日まで入隊延期が可能となった。
しかし、長く芸能界を取材してきた記者は、「BTSの活躍は素晴らしいものですが、兵役は別問題」と言う。
「今やグローバルに活躍する俳優も多いですから、そういうスターたちも含めるのか。基準を設けるのが難しいし、『韓流スターだけ特別』というのは韓国ではまだ難しい。同世代とは比べものにならないほどの富や名声を持っているのに、という冷ややかな視線もあります。2020年に入隊時期の延長を盛り込んだ法改正も『BTSにしか適用されない』と皮肉った声は音楽界でも出ていました」
入隊時期が延長できる対象者の条件は、「大衆文化・芸術を管轄する文化体育観光相が文化勲章、褒章を受章した中から国威宣揚に貢献したと推薦する者」。しかし、この章の受章者はその分野で15年以上活動した者とされているため、K-POPアーティストでその条件を満たす者がでてくる可能性は低いといわけで、特例で受章したBTS以外には該当しない、と皮肉られた経緯がある。