雨が降ってくると、どこからともなく漂ってくる独特のにおいの名前。「降水確率100%」という言葉や、台風の予報円が表している正確な意味……。日常的に体験したり、目にしたりしてているにもかかわらず、“天気”や“気象”について知らないことは意外と多いものです。

 そんな“空のふしぎ”をわかりやすく解説し、大きな反響を呼んでいる一冊が、雲研究者の荒木健太郎氏による『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)。ここでは同書の一部を抜粋し、意外と知らない“天気”や“気象”の不思議について解説します。(全2回の2回目/前編を読む)

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あの“雨のにおい”には名前がある

 しばらく晴れていて久しぶりに雨が降った日には、特有のにおいがすることがあります。土っぽいような、懐かしいような、落ち着くような……。あのにおいには、じつは名前がついているのです。

 その名もペトリコール。長い間雨が降らない日が続いたあとの雨で、地面から上がってくるにおいを指す言葉で、ギリシャ語で「石のエッセンス」という意味です。ペトリコールが発生するのは、植物からできた油が乾燥した地面の土や石の表面にくっつき、雨が降ることによって空気中に出ることが原因と考えられています。このほかに、ゲオスミンという土のなかの細菌がつくる物質や、雷によって発生するオゾンも雨のにおいの原因のひとつと考えられています。ちなみに「オゾン」という名前の由来は、ギリシャ語で「くさい」という言葉だそうです……。

 雨が降る直前にもこのにおいがすることがあるのは、近くで雨が降ってできたペトリコールが風に流されているからなのです。

「降水確率100%=大雨」ではない

 気予報で「降水確率100%」と聞くと、どんな天気を想像しますか? もしかすると「100%の力で雨が降ってきて、土砂降りの大雨になる」と思っている人もいるかもしれませんね。しかし、降水確率100%というのは、必ずしも大雨になるという意味ではないのです。

 降水確率は、予報の対象地域で「その時間に降水量1㎜以上の雨か雪が降る確率」のことで、天気予報では10%ごとに表現されています。降水確率30%なら、「同じ状況が100回あったときに、およそ30回は1㎜以上の雨や雪が降る」ということを意味しています。

 このため、降水確率の数字が大きいほど大雨になるというわけではなく、強い雨でも弱い雨でも、雨が降りやすければ降水確率は高くなります。大気の状態が不安定なときは、降水確率30%でも積乱雲が発達して狭い範囲で土砂降りの雨になることもあります。降水確率の情報を上手に使って、雨にぬれないようにしてください。