干ばつが続いた際に雨乞いを行っていたように、人々の生活は古来より天気に左右されてきました。「天気を操作しよう」という試みは歴史上何度も繰り返されていますが、はたして思い通りに天気を操ることは可能なのでしょうか。
ここでは、映画『天気の子』の気象監修を務めた雲研究者、荒木健太郎氏の著書『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)の一部を抜粋。奥多摩町にある人工降雨施設の存在意義をはじめ、“天気”や“気象”のさまざまな不思議をわかりやすく解説します。(全2回の1回目/後編を読む)
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日本に台風がやってくる最大の理由
日本には毎年台風がやってきて、雨や風の災害をもたらします。台風は熱帯域で積乱雲が集まってできた熱帯低気圧のうち、最大風速が17.2m毎秒以上になったものです。台風という呼び名は北西太平洋のもので、北大西洋ではハリケーン、インド洋ではサイクロンと呼ばれます。
台風は春先には低緯度で発生して西に進みますが、夏には発生する緯度が高くなり、太平洋高気圧のふちに沿って日本に向かって北上する台風が増えてきます。秋の台風は日本付近の上空の偏西風に乗るため、南海上から放物線を描くように台風が北上し、日本は台風の通り道になるのです。
台風は中心付近の最大風速によっては「強い」「非常に強い」「猛烈な」という勢力、平均風速15m毎秒以上の強風域の大きさによっては「大型」「超大型」となることがあります。台風は大雨、暴風、高波に高潮とさまざまな災害を引き起こします。台風の接近が予想されているときには、早めに備えを確認しましょう。
人工降雨で天気は変えられるのか!?
「この日だけは晴れてほしい!」。行事や旅行などの予定日に、天気がよくなることを願うことは多いと思います。てるてる坊主や晴れ女、晴れ男など、天気にまつわる文化や言い伝えもたくさんありますよね。天気は自分たちが願うようにコントロールできるものなのでしょうか?
その答えは、「現代の技術では天気を変えることはできない」です。人工降雨・人工降雪という技術は気象学の分野にもありますが、これは水資源確保を目的としたもので、天気を変えることはできていません。「雨や雪を降らせるくらい水を含んでいるけどなかなか一歩を踏み出せない」という状態の雲に、ドライアイスなどをまいて背中を押してあげて、水をちょっとだけ吐き出させるのが人工降雨・人工降雪なのです。
過去に雹や台風などをコントロールできないかという研究もありましたが、科学的に意味のある結果は得られていません。近年では気象をコントロールする「気象制御」の研究を進めているグループもあります。今後の研究に期待しつつ、いまの段階では天気予報をうまく使うのがよさそうです。