異様に赤茶けた浴室、漂う石油くさい匂い、触るとピリピリしびれるようなお湯……。日本には、そんなエッジの効いた温泉が隠れている――。
日に日に寒くなってきたこの頃、お風呂で肩まで湯に浸かりたい季節がやってきた。家のお風呂やスーパー銭湯のみならず、近年のレトロブームで懐かし温泉も注目を集めている。
そんな長い年月営業している「秘湯」では、思わずぎょっとしてしまうような「月日の蓄積」が見られることがある。今回は日本各地の知られざる温泉を探訪した異色の書「侘寂温泉」シリーズ(辰巳出版)の執筆者で、写真家・文筆家の魚谷祐介氏に、全国各地にあるそんな思わず二度見してしまうような「ヤバい温泉」ベスト10を選んでもらった。
10位 温泉津温泉 元湯 泉薬湯@島根県
温泉津と書いて「ゆのつ」と読む温泉津温泉は、島根県の日本海に面した小さな漁港の町に湧く1300年の歴史がある名湯だ。元湯 泉薬湯は温泉街の中でも最も渋い雰囲気の公衆浴場。
レトロな浴室は自家源泉100%の激熱の温泉と析出物がコッテリと堆積した湯船がヤバい。ヌメっとした見た目だが手触りは石膏のような感じだ。泉質は含土類食塩泉という緑がかった濁り湯で有効成分がもの凄く濃厚だ。
小さい方の浴槽は45度以上とかなり熱く1分入るのがやっと。パンチ力のある強力な湯だが浴後はとてもさっぱりしていた。