「どうしてこんなところに!」――。いたる所に温泉がある国・日本。ドライブで道に迷ったり、地図を見ていて思わずこう言ってしまう“スゴいところ”に温泉があると気づいた人も多いだろう。
そこで、日本各地の知られざる温泉を探訪した異色の書「侘寂温泉」シリーズ(辰巳出版)を執筆した写真家・文筆家の魚谷祐介氏に、全国各地のまさしく秘境にある「辺境温泉」ベスト10を選んでもらった。
10位 恐山温泉@青森県
青森県下北半島の活火山である恐山は日本三大霊場の一つで、あの世とこの世の境目と言われる三途の川が流れ出る、宇曽利湖の美しい湖畔に恐山菩提寺がある。
付近は独特の雰囲気に満ち硫黄の匂いが風に乗ってくる。カラスが不気味な声で鳴き、見える人にはそこら中に見えるという。そんな恐ろしいところだが、火山地帯だけあって温泉が湧いているのだ。
入山料500円を払えば誰でも入浴可能で、素朴な湯小屋には地元特産のヒバの木で作られた浴槽に透明で熱い硫黄泉が掛け流されている。静寂に包まれた古風な湯小屋での入浴は心の垢も洗われるようだった。