ただ、海運を空輸に切り替えるとかなりのコスト増になってしまいます。現場では100円前後の手頃な価格の商材を空輸するという、赤字覚悟の輸送も起こっているようです。これでは企業の収益が圧迫されてしまいます。
納期厳守やブランドイメージを守ることも大切ですが、単体で見ると赤字にしかならない状況で、異常なのは言うまでもないでしょう。行き着く先は、コロナ禍でダメージを受けた企業同士が身を削りあう体力勝負、デスゲームです。顧客が苦しむ状況なのは先々を考えるとベターとは言えません。
半導体や部材の調達は、消費者には見えない世界なので、イメージしづらい領域です。しかし、物流・調達担当者たちが直面しているように、これまで発注すれば即座に届いたはずの部材が届かなかったり、遅れて届く……という状況が続いています。部材が届かなければ、自社の製品(サービスを含む)は出せませんし、経営計画にも狂いが生じてしまっているのです。
来年のクリスマスは…
では、今後どうなってしまうのでしょうか。
難しいのは、サプライチェーンの混乱について、「いつから解決する!」というタイミングの見通しが立たないことです。半導体の出荷状況が改善され、どこかで一気に流れが良くなる可能性もゼロではありません。その一方で「混乱はしばらく続く」という可能性もある。自社の努力でどうにもならないところに来ている以上、企業としては最悪の可能性を視野に入れて、動くしかありません。
ただ、それは経営のかじ取りを非常に難しくします。株価の下落は資金調達に悪影響を及ぼし、事態はより深刻になります。事ここに及んでは、もはやゲーム機メーカーだけの問題ではありません。特に半導体は、ゲーム機やスマホだけでなく、自動車や家電などあらゆる商品に影響するため世界的取り合いで「来年のクリスマスも危うい」という報道もされています。
我々は、注文通りにモノが届くことを「常識」と思っていました。新型コロナウイルスの感染拡大と、社会システムの変化を受けて、明らかに変わりました。これまでの「常識」は、実に危ういバランスの上に成り立っていたことを思い知らされているわけです。