「文藝春秋」2022年1月号より「愛子さま20歳『ご誕生の瞬間』」(堤治氏/山王病院名誉病院長)を一部公開します。(全2回の1回目/後編に続く)
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「赤ちゃんが生まれて母親も生まれる」
2001年11月30日深夜、雅子さまは陛下に伴われ、多くのカメラや記者が待つ半蔵門をにこやかな笑顔でお手振りしながら通過し、宮内庁病院にご入院されました。翌12月1日午前中に陣痛が始まり、LDR室(陣痛・出産・回復の間過ごす部屋)にお入りになったときには、陛下もお側に付き添い、陣痛の痛みを和らげるように雅子さまを励まされ、いよいよ分娩という時に別室でご待機頂きました。
雅子さまは日頃より陣痛や分娩進行の仕組みをよく勉強され、分娩に備えてエクササイズもしっかりされておられました。その賜物で37歳11カ月の高齢出産ではありましたが、特別な産科処置を受けることなく、1日午後2時43分、ご自身の力で内親王さまを安産でご出産されました。愛子さまは出生時体重3102グラム、ことのほかお元気で大きな産声は宮内庁病院中に響き渡ったことを覚えております。ご出産に立ち会った皆にとっては緊張が解け、思わず笑顔がこぼれた瞬間でもありました。
雅子さまには、生まれたての愛子さまをすぐに抱いて頂きました。雅子さまがもうすっかり優しい母の顔をされているのを拝見して、「赤ちゃんが生まれて母親も生まれる」ことを実感しました。後の会見でおっしゃられた「生まれてきてくれてありがとう」というお言葉は、そのときのごく自然に心に沸き起こったお気持ちをすっきりと一言で表したものとして今も印象に残っています。
大きな喜びをかみしめられた陛下
別室にお待ちいただいていた陛下には「たった今内親王さまがお生まれになりました。お二人ともお元気です」とご報告申し上げ、LDR室にご案内しました。待望の我が子との初対面に緊張気味でしたが、早速抱っこしていただくようお願いしました。生まれたての赤ちゃんを抱くのは初めての陛下は肩に力が入りぎこちない手つきながらも、大きな喜びをかみしめておられました。母児ともに安定していたので、陛下、雅子さま、愛子さまのお三方だけでお過ごし頂く時間をとることができたのも幸いでした。
愛子さまには退院まで、宮内庁病院の新生児室でお休みいただきました。陛下は何度か新生児室にお運びになり、日々かわる愛子さまの表情を嬉しそうにご覧になっていました。