「文藝春秋」2022年1月号より「愛子さま20歳『ご誕生の瞬間』」(堤治氏/山王病院名誉病院長)を一部公開します。(全2回の2回目/前編から続く)

◆◆◆

「私のこどもは普通より小さいのですか?」

 雅子さまに初めてお目にかかった時は、こちらの緊張が伝わったのでしょうか、にこやかに優しく接してくださり、医師に対する敬意と信頼の表情も見せてくださったので安心しました。陛下からは事前に、皇族であるからと言って特別な対応はしないで欲しいと言われていたこともあり、雅子さまには「受験とお産は勉強が大事です」と申し上げ、妊娠や分娩の仕組みをご説明しました。印象的だったのは、手帳に几帳面にメモをとられながら、何度も鋭いご質問をなさったことです。何事にも真面目に取り組むお人柄を垣間見た思いがいたしました。

2002年3月、お宮参りにあたる「賢所皇霊殿神殿に謁するの儀」に臨まれた ©JMPA

 テキストとして、私が監修した『初めての妊娠』(SSコミュニケーションズ)をお渡ししてありました。ある健診のとき「私のこどもは普通より小さいのですか?」とご質問があり驚いたことがあります。テキストでは、その時期の身長は(足の長さもふくめ)5センチと書いてあるのに、3.5センチしかないことを心配されたようでした。健診では、頭からお尻までの長さをご報告していたためその差が生じたのです。雅子さまはテキストをすみずみまで読み込んで頭に入れておられたのです。産婦人科医を40年間やってきて、そこまで読み込まれる産婦さんはおられませんでした。説明不足をお詫びしご理解いただきましたが、雅子さまの熱心さにこちらも身の引き締まる思いがいたしました。

ADVERTISEMENT

2005年8月、那須塩原駅での雅子さまと愛子さま ©JMPA

高齢出産で体調管理に励まれた

 お散歩やエクササイズも妊娠各時期にご指示申し上げると、きっちりその指示通りに、例えば、散歩を30分と申し上げれば、ストップウォッチで測られたかのように30分という具合に、模範的な妊婦生活をお送りいただきました。高齢出産ではありましたが、妊娠中からご夫婦仲良く体調管理に励まれたことが安産に結びついたと思われます。