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 妊娠中からご出産までお側にお仕えしてありがたかったことの一つに、雅子さまの定期的な妊婦健診に、陛下がご都合をつけ、ご一緒に宮内庁病院にお越しいただけたことがあります。超音波画像をご夫婦そろって見て頂き、はじめは小さな点のようにしか見えない生命が育っていく過程をお二人で見守られました。お腹の中の愛子さまが大きく成長して活発に運動される仕草をお二人が嬉しそうにご覧になって、お互いの目を見つめられお気持ちを通じ合わされている姿に、お二人の仲睦まじさを目の当たりにした気がしたものです。

三井浜を散策されるご一家 ©JMPA

皇后さまの健康に気を配り、皇后さまを守る

 20年前は、妊婦健診は妊娠した女性だけが受診すればいいという考え方がまだ一般的でした。そのためご多忙な陛下が健診に同行することに批判的なメディアもありました。陛下はメディアの後ろに国民がいることは十分ご承知で、側近を通じてメディアの動向は把握しておられたと拝察いたします。しかしながら陛下が動じることはありませんでした。夫として、また生まれてくる子供の父として、皇后さまの健康に気を配り、皇后さまを守るという強いお心の表れで、雅子さまは本当にお幸せだと感じました。

 妊娠中の妊婦健診は近年、夫婦そろって受ける風潮が定着しています。現在山王病院では、ご主人が一緒に来院され、胎児の超音波像を見て父性に目覚める方が少なくありません。妊娠出産は夫婦がともに協力すべきものと、陛下がご自身の行動で国民を導いてくださったとありがたく思うものです。

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2005年12月、愛子さまのお誕生日に際してのご近影 宮内庁提供

性別を知らせなかった理由

 陛下の思いやりや深いお考えを身近に感じたのは、健診だけではありません。当時、世間の大きな関心を集めていた性別の告知もその一つでした。性別は妊娠の早期でも超音波検査で知ることができます。性別を知らせるか否かは、夫婦の考え方次第ですが、今は10組のご夫婦に尋ねると8組か9組の方は教えてほしいと答えます。

 陛下にご確認すると性別を調べ知らせる必要はないとはっきりおっしゃられました。ちょうどその頃、女性天皇、女系天皇の議論があり、妊娠中に性別を知らせることで雅子さまのご負担が増えることがないようにというお心配りだったのでしょう。陛下の雅子さまへの思いやりであったと拝察するものです。