その芦田さんも今や有名進学校で学ぶ17歳の高校生。「品があって素敵」「すっきりと美しい女性に成長した」と評判はうなぎ登りで、新しいCMでは人工衛星になったり白衣姿でコンタクトレンズを薦めたりと活躍の幅を広げています。
そう、彼女は一見すると頭脳明晰な優等生的イメージ。しかし、そこに留まらない点がまた魅力的です。誰もが想像できる「芦田愛菜像」をきちんとやった上で、良い意味で予想を裏切っていく挑戦をしているから。
12歳にして「親殺しをしてしまう主人公」に抜擢
みんなが知っているメジャーな作品とは言えないかもしれませんが、記憶に残る芦田さんの姿があります。12歳の時に出演したフェイク・ドキュメンタリー『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京・2017年)。
それは、世界的な映画賞カンヌ映画祭パルムドールを獲得すべく映画の制作を進めるプロデューサーを追いかけたドキュメント風ドラマでした。山田孝之さんが俳優としてではなくプロデューサーとして登場し、映画のノウハウを学ぶために大学に体験入学したり有名監督に話を聞いたり、スポンサー集めからキャスティング、撮影に至るまでをカメラが追いかけていく。
その映画の内容は親殺しの大量殺人鬼が題材となっていて荒唐無稽、いったいどこまでが現実でどこまでがフィクションかわからない。虚構と現実のあわいを狙ったカオスな作品でした。
この映画になんと「親殺しをしてしまう主人公」としてキャスティングされたのが12歳の芦田さん。当時小学6年生、実年齢のままランドセルを背負って可愛らしく登場したのですが、「演技が上手い少女」のイメージなんて軽々と飛び越えていました。
そこにはまさに「考える女優」がいた
芦田さんは、映画の中で主人公を演じている自分と素に戻った自分、その両方をわきまえてシーンごとにどうふるまえばよいのか直感的に理解していました。もう一つ別の目で外から自分を観察し、鳥の視点で現場を俯瞰していたのです。
芦田さんはプロデューサーの山田さんと同等に演技や映画作りについて考えを口にしたりして存在感を見せつけました。しかしだからといって、こまっしゃくれた生意気さや嫌みは皆無で、まさに「考える女優」がそこにいたのでした。
何よりも驚かされた点――それは、深夜枠の奇妙な実験的フェイク・ドキュメンタリーへの出演を芦田さんが快諾したこと。一方の山田さんも「女優としての芦田愛菜の存在の貴重さは、皆もっとしっかり考え直さなくてはいけない」としみじみ彼女の才能を讃えていました。
さて、あらためて“サステイナブル”のCMに適した人とはどんな人か? 前述した3要素に加えてもう一つ求めたいこと……それは水のようにたえず循環し、一か所に留まらないということ。変わることを恐れず、枠を突き破ってまた新しい自分になっていくこと。そう、「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という『方丈記』の有名な一節そのままに。自分のイメージをただ守るのではなく、未知の挑戦と冒険を重ねて変わっていくことができる人。
透明感、清潔感、聡明さ、そして絶えず変化しゼロになれる潔さ。やはりそのイメージを体現するには芦田愛菜さんしかいなさそうです。