紅茶飲料市場は、過去5年間での販売実績が約12%増で推移している。成長の要因は大きく2つある。

 紅茶は、もともとアフタヌーンティーや休日のご褒美など、リラックスタイムのちょっとした“特別な飲み物”として生活者に認識されていた。それが、コロナ禍となり自宅で過ごす時間が増えたことから、ティーバッグや水出しなどで淹れて家の中で飲む機会が増加。生活者にとってより身近な飲み物へ変化している。

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 また、健康志向の高まりから飲料市場全体では無糖飲料が拡大。大手飲料メーカーの調査によれば、2020年には無糖飲料の構成比が市場全体で53%と過半数を占める状態になっている。この無糖化の流れが、紅茶飲料にも波及しているのだ。無糖紅茶にカテゴリーを限れば、直近3年間の販売実績は約2割増となっている。

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無糖飲料が市場に占める比率の推移(縦軸は%、横軸は1980年から2020年の西暦) ※伊藤園資料より ©文藝春秋

 もともと無糖紅茶としては、「シンビーノ ジャワティストレート」(大塚食品)や「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」(キリンビバレッジ)があった。それらの製品は、食事と一緒に飲むことを意識した味の設計であり、40~50代男性のユーザーが多いのが特徴だ。

 一方で、ここ最近の無糖紅茶の新製品で注目されている「クラフトボスTEA」(サントリー食品インターナショナル)、「紅茶花伝」(コカ・コーラシステム)、「TEAs’ TEA」(伊藤園)は、豊かな香りやほのかな甘さを感じられるような味覚が売りのタイプ、さらには果汁入りタイプなど、これまでとは異なる嗜好の製品が多い。日常的に気分転換時に飲む提案を行うことで、飲用シーンやターゲットユーザーを広げ、若年層や女性層にユーザーを拡大させているようだ。

無糖紅茶飲料の歴史は「あるパーティー」からはじまった

 日本での無糖紅茶の歴史は、1989年に発売された大塚食品の「シンビーノ ジャワティストレート」が無糖紅茶飲料のジャンルを切り拓いたことからスタートする。大塚ホールディングス前会長の故・大塚明彦氏(当時大塚食品社長)が、無糖のどんな食事にも合う飲料はできないものかを検討していた矢先、1988年にアメリカ・カリフォルニアのある研究所の竣工パーティーに招かれたことが、その誕生のきっかけだといわれている。