近年、無糖炭酸水は生産数量を伸ばし続けており、コロナ禍の2020年も前年比115%の約57万キロリットルとなった(全国清涼飲料連合会調べ)。カテゴリー別の生産量シェアでは飲料全体の2.7%を占め、烏龍茶カテゴリー(2.5%)を抜き去り、野菜飲料と肩を並べている。炭酸カテゴリーの中では、透明炭酸飲料(1.9%)を上回り、コーラ炭酸飲料(5.4%)の半分の規模まで拡大してきた。
炭酸水の市場規模は約2000億円規模で、販売数量は6000万ケース超とみられる(1ケース=500mlPET×24本など)。家計消費支出(総務省)においても、炭酸飲料全体の1世帯当たり年間支出金額は、2019年の5710円から2020年は6649円で約16%伸ばしているが、その牽引役は無糖炭酸水だ。市場に、いま何が起きているのだろうか。
「ウィルキンソン」の独占市場に起こる異変
もともと炭酸水は、欧米で食事の際に飲まれていたが、硬水の商品が多かったため、軟水に慣れた日本人には直接飲用が定着せず、BARなどの割り材として長年親しまれてきた。10年前まではビン容器が多く、外食店向けの業務用商品の性格が強かった。2000年代後半のハイボールブームなどで割り材としての需要が高まっていった。
本格的な成長のきっかけは、2011年にアサヒ飲料が「ウィルキンソン」の500mlをPET容器で発売したこと。最近では、カロリー離れや砂糖離れなどの消費者の健康志向により、そのまま飲む“ストレート飲用”の需要が高まって、炭酸水ユーザーが増加している。
今年も市場成長は続いているが、昨年と異なるのは、フレーバーのついていないプレーンタイプに大手各社が注力していることだ。
これまでプレーンのカテゴリーは、市場を切り開きトップシェアを築いた「ウィルキンソン タンサン」(アサヒ飲料)の独壇場であり、競合はフレーバー商品に活路を見出していた。
しかし、市場で販売構成比の約7割を占めるのはプレーン。今後の成長を図る上では「ウィルキンソン」の独走を指をくわえてみているわけにはいかない。今年、日本コカ・コーラとサントリー食品インターナショナルが相次いで強炭酸を特徴とする新ブランドを投入し、市場では激戦が繰り広げられている。