8割は「パス」に賛成
そんな中、この「衛生パス」に反対のデモが各地で人を集めていた。7月にマクロン大統領が、衛生パスの適用範囲を飲食店、文化施設等に広げ、公衆と関わる仕事に従事する者にはワクチン接種を義務付ける方針を発表した直後から、週末ごとに抗議の声が上がった。ワクチンを接種していない人が諸活動から疎外されるのは不平等である。またワクチン義務を課された業種の場合、接種しないと就業停止になって給与も出ないというのは事実上の強制であり、ワクチン接種するかどうか決める自由を侵害すると訴えていた。
私は衛生パスに反対ではない。店や文化施設などを閉めて人々の経済活動を阻害することがもう続けられない以上、ワクチン接種を理由に全ての活動を解禁するのは理に適っている。デモは大きく報道されたけれども、フランス人も8割は衛生パスに賛成しており、時が経つにつれ、反対デモは縮小している。
PCRおよび抗原検査が有料に
それに、正確に言うならば、衛生パスは「ワクチン・パスポート」ではなく、72時間以内のPCR検査・抗原検査の陰性証明、またコロナ感染して回復したという証明も含まれる。だからワクチンを接種しなくても、頻繁にPCR検査をしていれば対応できていた。ただ、政府は10月15日を境に、それまで無料(保険で100%還付)だったPCRおよび抗原検査を有料にするので、そうなると実質的にワクチンを接種しないで衛生パスを獲得するのは難しくなる。
ワクチンの接種率が9割を超えなければ集団免疫を得られないので、国が接種させようとするのは理解できる。個人レベルでもワクチンを打って死亡したり深刻な副反応が出たりする可能性と、コロナにかかって死亡したり深刻な後遺症が残る可能性を秤にかけて、ワクチンの弊害の方がずっと可能性が低い場合、ワクチンを打つ方が合理的だ。
それでも、どうしてもワクチンを打ちたくないという人の自由を侵さないために、PCR検査を無料のままにしておくべきだと個人的には思っている。