オミクロン株の感染例が世界中で報告されるなか、最も強硬な水際対策を布いている国のひとつが日本だ。
国交省が独自に出したとされる国際線の予約停止要請は撤回されたものの、11月30日以降、全外国人の新規入国は1か月停止されている。さらに邦人であっても、計61の「オミクロン株に対する指定国・地域」からの帰国者については3~10日間、検疫所の施設で待機させる「停留」の措置が取られている(12月7日現在)。
さらに現場の検疫体制も、帰国者に大きな負担をかけるものとなっている。
12月5日にアラブ首長国連邦から帰国した40代女性が明かす。
「午後5時半、飛行機はほぼ定刻に成田空港に到着したのですが、降機すると検疫所の係員から、過去14日間の滞在歴を厚労省のウェブ上に用意されたオンラインの質問票に入力するよう求められました。その結果がQRコ―ドとなって表示され、それを係員に提示するという仕組みです。さらに、陰性証明書やワクチン接種証明書などのチェック、さらに抗原定量検査による陰性確認を経て、待機施設のホテルに案内されるのですが、それぞれのステップで2~3時間の待ち時間があり、ホテルに到着したのは飛行機を降りて約11時間後のことでした」
さらに女性によると、長旅の後に11時間待たされる帰国者への配慮は、全く感じられなかったという。
「空港での11時間で提供されたのは、清涼飲料水と水のペットボトル2本と大豆バーが1本だけです。私は自宅で帰りを待つ家族に状況を逐一知らせていたのですが、やがてスマホのバッテリーが切れてしまった。そこで、係員にスマホを充電させてほしいと申し出たのですが、『電源がない』と。これにはその場にいた帰国者の多くから不満の声が上がっていました。同じ便だった赤ん坊を抱いたお母さんは、ずっとパイプ椅子に座ったまま子供をあやし続けていました。ベビーベッドくらい用意してあげればいいのに…」
そしてやっとの思いでホテルに着いた後も、さらなる仕打ちが待っていた。
「ホテルでようやく弁当を出されたのですが、夕食として出された弁当はその日の午前4時に消費期限が過ぎているものでした。空腹でしたし、ほかに食べ物もないので食べましたけど…」
一方で、そんな“過酷な扱い”を避けようと画策した悪質な搭乗者による大問題も起こっている。
それが「検疫のすり抜け」だ。