「平和の党」のアイデンティティが問われている
15年の安全保障関連法案の当時のことを現役の学会員らに取材すると、各地の学会員の勉強会で「なんでこんな法案に賛成するんだ」「それだけはやっちゃいけない」という反対の声があがったという証言を耳にした。当時、東京・信濃町の公明党本部の周辺でも創価学会のシンボルの三色旗を振る者の姿が報じられた。
学会会長の原田稔は、インタビューで安全保障関連法案については、「憲法の平和主義、専守防衛の枠内に収めることができたと評価している」と述べた上で、天野たちのような動きにはこんな突き放した言い方をした。
「ごく一部の会員の方がいろんな意見を持つことは当然あるでしょう。ただ、会員以外の方が学会の三色旗を掲げて騒ぐようなことがあったとすれば、迷惑な話です」(朝日新聞16年9月22日付)
そして、岸田政権は敵基地攻撃能力保有の議論を本格化させる。憲法改正に積極的な安倍派は政権を支える屋台骨である以上に、岸田自身が改憲に意欲を見せている。自民党と連立を初めて22年、公明党にとっても、「平和の党」のアイデンティティが問われる重大局面である。
公明党代表の山口那津男は7日の会見で、敵基地能力保有の議論についての発言が後退しているのではないか、との記者の問いに対し、「現実を踏まえて議論する」と述べた上で、「決めつけはやめなさい」と言葉を荒らげた。
「平和の理想」よりは、安全保障環境の変化という「現実」から語らねばならない成り行きに、現役の学会員たちから「また自民党にすり寄る結論になるのではないか」と懸念する声が上がる。山口も、そんな視線を感じ、苛立ったのだろうか。
連立維持が前提なのだと受け取られる決定プロセスを踏めば、常勝選挙マシーンと称された学会組織の足元が揺らぐ可能性がある。(文中敬称略)