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「自分の魅力や才能がわからない」神田沙也加さんが向き合い続けた“芸能界の厳しさ”と松田聖子との“理想の母娘関係”〈もし母親になったら子供と…〉

#2

source : 文藝春秋 2001年10月号

genre : ライフ, 芸能

note

日記には〈そのままの沙也で飛んでみようと思う〉

 私は今、かつて母がやっていたグリコのCMをやらせていただいている。CMデビューが決まって、嬉しくて嬉しくて、もらった絵コンテを毎日眺めていた(笑)。サイパン行きの飛行機に、母と一緒ではなく、初めて自分の“仕事”のために乗った。ホテルにチェックインする時、思い切って名前の欄に“SAYAKA”と書いてみた。まだぎこちないその文字が、CMデビューとともに名前になっていくんだなぁと実感した。それから、何とCM曲もいただいた。自分の書いた詞が、可愛い曲にぴったり乗っていたあの時の感動は、それまでにないものだった。

©AFLO

 その夜、ホテルに戻って、日記を書いた。

〈サイパンに来れて嬉しい。グリコのCMをやれて本当に良かった。明日から撮影だけど、いつでも自分らしく、そのままの沙也で飛んでみようと思う――〉

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 でも、実は今もまだ、“SAYAKA”が自分であるという気がしない。普段の“沙也加”と何も変わらないはずなのに、“SAYAKA”となっただけで、今までとは違った別の存在に思えてしまう。

 母をただ外から眺めているだけでも、芸能界で仕事をしていくことの大変さが伝わってくる。外側から見える華やかさ、そして内側に秘めている地道に続けて来た数々の努力、沢山のつらいこと。何か少しでも動けば、それが全国の人に知れ渡ってしまうプライバシーのなさ。それだけで芸能界の厳しさは充分にわかっていたつもりだった。

 まだほんのわずかな期間だけど、自分がその身になってみて、まだ全然理解しきれていなかったことに気がついた。母がどれだけ頑張ってきたか、やっとわかり始めた気がする。おそらく母は、芸能界に入って、普通に暮らしていればしなくても良い苦労や痛みを私に経験させたくなかったんだと思う。デビューした今、母に守られていると実感する。

神田沙也加さん ©AFLO

 私自身、自分のどこに魅力があるのか、どんな才能があるのか、どこが足りないのか、本当に申し訳ないぐらいにわからない。とにかく、目の前にある楽しいことにチャレンジしていって、最終的に「これをやりたい」「ここをこうしたい」と心から思える目標を見つけること自体が、今の私の目標なのだ。これから新しいSAYAKAがいっぱい生まれてくると思うけれど、ゆっくりと育てていきたい。

◆ ◆ ◆

【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】
▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(毎日16時〜21時、毎月10日は午前8時〜翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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