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2022年の論点

改めて明白になった“存在感”の大きさ…「キングメーカー」安倍晋三が目指すもの

改めて明白になった“存在感”の大きさ…「キングメーカー」安倍晋三が目指すもの

2022/01/11

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会, 政治

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 ただし、筋が通っていることと、現実の政治は別問題です。安倍さんも高市さんと近い考えを持っていましたが、第二次政権になってからは、「封印」することを厭いとわなかった。

 2013年に安倍さんは靖国神社参拝をしましたが、中韓に留まらず、米のオバマ政権も不快感を表明しました。その直後に、私は安倍さんと面会する機会があったので、「アメリカは、あなたを戦前回帰の復古主義者だと思っている」と率直に伝えました。それがきっかけとなったのかわかりませんが、その後在任中に靖国を参拝していません。

安倍さんの第三次政権は…

 またアメリカのトランプ前大統領との関係が有名ですが、冷え切った中国との関係も重視していました。習近平国家主席と会談し「戦略的互恵関係」になることを表明してもいます。それが、安倍さん流のリアリズムです。

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©文藝春秋

 逆にいえば、首相在任中に安倍さんがやりたかった「ホンネ」の部分を高市さんが担っているといってもいいでしょう。首相退任後の安倍さんに会うと、非常に生き生きとしていて、自由に発言していることが伝わってきます。最近では、公式YouTubeチャンネルを開設し、自由に自分の主張を広げる場を増やそうとしています。

 以上の点から、私は安倍さんの第三次政権はない、と考えています。安倍さんは第一次政権の失敗から学び、権力というものが、どのようなものかをよくわかっています。自分が三度総理になることで、世論がどれだけ反発するかも理解しているはずです。安倍さんは、キングメーカーとしてのいまの立場を手放すことはないでしょう。2022年以降も総理時代とかわらず安倍さんの言動を注視する時代が続くのかもしれません。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。

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